コラム

2023/03/02

第一種動物取扱業者の登録手続きについて

 ペットショプやペットホテルなど、業として、営利性を持って行うものは第一種類動物取扱業者にあたります。

 第一種類動物取扱業者は命あるものである動物を扱うプロとして、より適正な取扱いが求められます。

 本コラムでは、第一種類動物取扱業者の概要や登録について解説いたします。

第一種類動物取扱業者とは

概要

 業として、動物の販売、保管、貸出、訓練、展示、競りあっせん又は譲受飼養を営利目的で行う者は、第一種動物取扱業者となります。

 ここで言う「動物」とは、哺乳類・鳥類・爬虫類に属するものに限られ、畜産用動物・実験用動物は含まれません。

 第一種動物取扱業者は、動物の適正な取扱いを確保するための基準等を満たしたうえで、都道府県知事又は政令指定都市の長の登録を受けなければなりません。

業種業の内容該当する業者の例
販売動物の小売及び卸売並びにそれらを目的とした繁殖または輸出入を行う業 (その取次ぎまたは代理を含む)・小売業
・卸売業
・販売目的の繁殖または輸入を行う者
保管保管を目的に顧客の動物を預かる業・ペットホテル業者
・美容業者(動物を預かる場合)
・ペットのシッター
貸出愛玩、撮影、繁殖その他の目的で動物を貸し出す業・ペットレンタル業者
・映画等のタレント
・撮影モデル・繁殖用等の動物派遣業者
訓練顧客の動物を預かり訓練を行う業・動物の訓練
・調教業者
・出張訓練業者
展示動物を見せる業
(動物とのふれあいの提供を含む)
・動物園
・水族館
・移動動物園
・動物サーカス
・動物ふれあいパーク
・乗馬施設
・アニマルセラピー業者(「ふれあい」を目的とする場合)
競りあっせん業動物の売買をしようとする者のあっせんを会場を設けて競りの方法により行う業・動物オークション(会場を設けて行う場合)
譲受飼養業有償で動物を譲り受けて飼養を行う業・老犬老猫ホーム

(出典:環境省「動物の愛護と適切な管理」)

登録手続き

 第一種動物取扱業を営もうとする者は、当該業を営もうとする事業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければなりません。(動物の愛護及び管理に関する法律(以下「動物愛護管理法」といいます。)10条)

申請

 登録を受けようとする者は、以下に掲げる事項を記載した申請書に環境省令で定める書類を添えて、都道府県知事に提出しなければなりません。(動物愛護管理法10条2項)

  1. 氏名又は名称及び住所並びに法人は代表者の氏名
  2. 事業所の名称及び所在地
  3. 事業所ごとに置かれる動物取扱責任者の氏名
  4. その営もうとする第一種動物取扱業の種別並びにその種別に応じた業務の内容及び実施の方法
  5. 主として取り扱う動物の種類及び数
  6. 動物の飼養又は保管のための施設(飼養施設)を設置しているときは、次に掲げる事項
    (a)飼養施設の所在地
    (b)飼養施設の構造及び規模
    (c)飼養施設の管理の方法
  7. その他環境省令で定める事項

 申請の書式は、環境省に雛形が用意されていますので、そちらをご参照ください。第一種動物取扱業登録申請書(様式第1)

 なお、犬猫販売業者の登録にあたっては、上記申請とともに、下記の事項も併せて記載しなければなりません。(動物愛護管理法10条3項)

  1. 販売の用に供する犬猫等の繁殖を行うかどうかの別
  2. 販売の用に供する幼齢の犬猫等(繁殖を併せて行う場合は、幼齢の犬猫等及び繁殖の用に供し、又は供する目的で飼養する犬猫等。)の健康及び安全を保持するための体制の整備、販売の用に供することが困難となった犬猫等の取扱いその他環境省令で定める事項に関する計画

登録拒否事由

 動物愛護管理法12条1項では、第一種動物取扱業登録に関する登録拒否事由を5つ規定しています。登録拒否事由に該当する場合、都道府県知事等は、登録を拒否しなければなりません。

 また、都道府県知事は、登録を拒否したときは、遅滞なくその理由を示して、申請者に通知しなければなりません。(動物愛護管理法12条2項)

1 登録を受けようとする者に関する事由

 第一種動物取扱業の登録を受けようとする者が下記のいずれかに該当する場合(動物愛護管理法12条1項各号)。

  1. 成年被後見人もしくは被保佐人
  2. 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
  3. 登録を取り消され、その処分のあった日から5年を経過しない者
  4. 第一種動物取扱業者で法人であるものが登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその法人の役員であった者でその処分のあった日から5年を経過しないもの
  5. 業務の停止を命じられ、その停止の期間が経過しない者。
  6. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  7. 動物愛護管理法等の規定により罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
  8. 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員、又は、暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者
  9. 第一種動物取扱業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者として環境省令で定める者

 法人が登録申請する場合は、役員のうちに上記事由に該当するものがいる場合、登録を拒否されます。(動物愛護管理法12条8項)また、個人の場合でも、環境省令で定める使用人が上記事由に該当するものがいる場合、登録を拒否されます。(動物愛護管理法12条9項)

2 動物の適正な取扱確保に関する基準についての事由

 登録の申請に関して営もうとしている動物取扱業の種別、種別に応じた業務の内容実施方法が、動物の健康および安全の維持その他動物の適正な取扱いを確保するために必要な基準に適合しない場合。

 登録の申請をする場合は、営もうとしている業種別に応じて、動物愛護管理法施行規則3条1項で定められた基準を満たす必要があります。

  1. 事業所及び飼養施設の建物並びにこれらに係る土地について、事業の実施に必要な権原を有していること。
  2. 販売業または貸出業を営もうとする者にあっては、事業の実施の方法を明らかにした書類の記載内容がそれぞれ適合していること。
  3. 事業所ごとに、1名以上の専属の動物取扱責任者として常勤していること。
  4. 事業所または事業所以外でも、顧客に対し適正な動物の飼養及び保管の方法等に係る重要事項を説明し、又は動物を取り扱う職員として、次に掲げる要件のいずれかに該当する者が配置されていること。
    (a)営もうとする種別ごとに種別に係る半年間以上の実務経験があること。
    (b)営もうとする種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校、その他の教育機関を卒業していること。
    (c)公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること。
  5. 事業の内容及び実施の方法にかんがみ、必要な飼養施設を有し、営業の開始までにこれを設置する見込みがあること。

3 飼育施設の構造などに関する事由

 登録申請の際の飼養施設の構造、規模及び管理に関する基準に適合していない場合。

「基準」については、以下のように規定されています。(動物愛護管理法施行規則3条2項)

  1. 飼養施設は、ケージ、照明設備、給排水設備など施行規則第2条第2項第4号イからワまでに掲げる設備等を備えていること。
  2. ねずみ、はえ、蚊、のみ、その他の衛生動物が侵入するおそれがある場合にあっては、その侵入を防止できる構造であること。
  3. 床、内壁、天井及び附属設備は、清掃が容易である等衛生状態の維持及び管理がしやすい構造であること。
  4. 飼養又は保管をする動物の種類、習性、運動能力、数等に応じて、その逸走を防止することができる構造及び強度であること。
  5. 飼養施設及びこれに備える設備等は、事業の実施に必要な規模であること。
  6. 飼養施設は、動物の飼養又は保管に係る作業の実施に必要な空間を確保していること。
  7. 飼養施設に備えるケージ等は、次に掲げるとおりであること。
    (a)耐水性がないため洗浄が容易でない等、衛生管理上支障がある材質を用いていないこと。
    (b)底面は、ふん尿等が漏えいしない構造であること。
    (c)側面又は天井は、常時、通気が確保され、かつ、ケージ等の内部を外部から見通すことのできる構造であること。ただし、当該飼養又は保管に係る動物が傷病動物である等特別の事情がある場合には、この限りでない。
    (d)飼養施設の床等に確実に固定する等、衝撃による転倒を防止するための措置が講じられていること。
    (e)動物によって容易に損壊されない構造及び強度であること。
  8. 構造及び規模が取り扱う動物の種類及び数にかんがみ著しく不適切なものでないこと。
  9. 犬又は猫の飼養施設は、前各号に掲げるもののほか、基準省令第二条第一号に定める飼養施設の管理、飼養施設に備える設備の構造及び規模並びに当該設備の管理に関する事項に適合するものであること。
  10. 犬又は猫の飼養施設は、他の場所から区分する等の夜間(午後8時から午前8時まで)に、施設に顧客、見学者等を立ち入らせないための措置が講じられていること(販売業、貸出業又は展示業(動物の展示を業として行うことをいう。以下同じ。)を営もうとする者であって夜間に営業しようとする者に限る。)。

4 犬猫等健康安全計画に関する基準についての事由

 犬猫等販売業者に対して、その犬猫等健康安全計画が、幼齢の犬猫等の健康および安全の確保並びに犬猫等の終生飼養の保を図るための基準に適合しない場合。

 基準については、次のように定められています。(動物愛護管理法施行規則3条3項)

  1. 犬猫等健康安全計画が、施行規則3条1項の動物の健康及び安全の保持その他動物の適正な取扱いを確保するため必要なものとして環境省令で定める基準、施行規則3条2項の環境省令で定める飼養施設の構造、規模及び管理に関する基準並びに基準省令第2条の基準に適合するものであること。
  2. 犬猫等健康安全計画が、幼齢の犬猫等の健康及び安全の保持の確保上明確かつ具体的であること。
  3. 犬猫等健康安全計画に定める販売の用に供することが困難になった犬猫等の取扱いが、犬猫等の終生飼養を確保するために適切なものであること。

5 申請書などに虚偽記載や記載欠如がある場合

 申請書または添付書類に虚偽記載がある場合や、重要事実の記載が欠けている場合。

登録の実施

 都道府県知事等は、登録申請があった場合には、登録拒否事由があるときを除いて、氏名または名称などの所定の事由、登録年月日および登録番号を、第一種動物取扱業者登録簿に登録し、申請者に通知しなければなりません。登録されると、申請者には、登録証が交付されます。

 なお、第一種動物取扱業者登録簿は、一般に閲覧することができます。(動物愛護管理法15条)

登録の更新など

⑴ 更新

 第一種動物取扱業者の登録は、5年ごとに更新を受けなければなりません。更新を受けなければ、登録の効力を失います。(動物愛護管理法13条)

⑵ 変更登録

 第一種動物取扱業者が、以下の登録の変更をする場合は、あらかじめ都道府県知事に届け出なければなりません。(動物愛護管理法14条)

  • 営もうとする第一種動物取扱業の種別並びにその種別に応じた業務の内容及び実施の方法、若しくは、販売の用に供する犬猫等の繁殖を行うかどうかの変更(環境省令で定める軽微なものを除く。)をする場合
  • 飼養施設を設置しようとする場合
  • 犬猫等販売業を営もうとする場合には、あらかじめ、環境省令で定めるところにより、都道府県知事に届け出なければなりません。

 第一種動物取扱業者は、以下の変更があった場合、その日から30日以内に、環境省令で定める書類を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。

  • 環境省令で定める軽微な変更があった場合
  • 動物愛護管理法10条2項各号(4号を除く。)若しくは第3項2号に掲げる事項に変更があった場合

 環境省令で定める軽微な変更とは、以下に掲げるものとなります。(動物愛護管理法施行規則5条4項)

  1. 飼養施設の規模の増大であって、その増大に係る部分の床面積が、登録または変更届出をしたときから通算して、延べ床面積の30%未満であるもの
  2. ケージ等、洗浄設備、消毒設備、汚物、残さ等の廃棄物の集積設備、動物の死体の一時保管場所、餌の保管設備、清掃設備、空調設備及び訓練場に係る変更であって、次に掲げる事項に係る部分の床面積が、登録を受けたときから通算して、飼養施設の延べ床面積の30%未満であるもの
    (a)設備等の増設
    (b)設備等の配置の変更
  3. 照明設備又は遮光のため若しくは風雨を遮るための設備の増設及び配置の変更
  4. 飼育設備に係る変更であって、現在の設備等と同等以上の機能を有する設備等への改設であるもの
  5. 飼養施設の管理の方法の変更
  6. 営業時間の変更であって、その変更に係る部分の営業時間が、夜間に含まれないもの

 また、動物愛護管理法10条1項の登録を受けて犬猫等販売業を営む者は、犬猫等販売業を営むことをやめた場合には、第16条1項に規定する場合を除き、その日から30日以内に、環境省令で定める書類を添えて、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。

⑶ 登録取消し、業務停止命令

 都道府県知事等は、第一種動物取扱業者に以下の事由が認められる場合にはその登録を取り消し、または6カ月以内の期間を定めて、業務の全部または一部の停止を命じることができます。(動物愛護管理法19条)

  1. 不正の手段により第一種動物取扱業者の登録を受けたとき。
  2. 業務の内容及び実施の方法が動物の健康及び安全の保持、その他動物の適正な取扱いを確保するため必要な基準に適合しなくなったとき。
  3. 飼養施設の構造、規模及び管理の方法が、動物愛護管理法12条1項に規定する飼養施設の構造、規模及び管理に関する基準に適合しなくなったとき。
  4. 犬猫等健康安全計画が動物愛護管理法12条1項に規定する幼齢の犬猫等の健康及び安全の確保並びに犬猫等の終生飼養の確保を図るため適切な基準に適合しなくなったとき。
  5. 動物愛護管理法12条1項1号、2号、4号又は5号の2から9号までのいずれかに該当することとなったとき。
  6. 動物愛護管理法、若しくは動物愛護管理法に基づく命令又は処分に違反したとき。

 都道府県知事等が、動物愛護法19条の処分をした場合には、第一種動物取業者に対して、遅滞なく、その理由を示して、通知しなければなりません。(動物愛護管理法19条2項・同12条2項)

 業務停止命令を受けたにもかかわらず、従わない場合には、100万円以下の罰金に処せられます。(動物愛護管理法46条3項)

 また、登録の取消しを受けた第一種動物取扱業者は、その日から起算して30日を経過するまでの間に登録証を返納しなければなりません。(動物愛護管理法施行規則2条9項1号)

⑷ 廃業の届出

 第一種動物取扱業者が下記のいずれかに該当することとなった場合は、その日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければなりません。(動物愛護管理法16条)

  1. 死亡した場合 【届出人:相続人】
  2. 法人が合併により消滅した場合 【届出人:法人を代表する役員であった者】
  3. 法人が破産手続開始の決定により解散した場合 【届出人:破産管財人】
  4. 法人が合併及び破産手続開始の決定以外の理由により解散した場合 【届出人:清算人】
  5. その登録に係る第一種動物取扱業を廃止した場合 【届出人:第一種動物取扱業者であった個人又は第一種動物取扱業者であった法人を代表する役員】

 なお、廃業に関する届出をしなかったり、虚偽の届出をした場合、20万円以下の過料に処せられます。(動物愛護管理法49条1項)

まとめ

 第一種動物取扱業者として登録されるためには、様々な条件を満たしている必要があります。

 また、登録がなされた後も、登録取消しや業務停止命令といった行政処分がなされることがあります。

 登録などに際し疑問点があった場合、登録取消し等の事由が生じ行政処分がなされるおそれがある場合、行政処分がなされてしまった場合には、弁護士等の専門家に相談されることをおすすめします。

弁護士 石堂 一仁

所属
大阪弁護士会
大阪弁護士会 財務委員会 副委員長(H29.4~)
大阪弁護士会 司法委員会(23条小委員会)
大阪弁護士会 弁護士業務改革委員会(ベンチャー法務プロジェクトチーム)
近畿弁護士会連合会 税務委員会 副委員長(H31.4~)
租税訴訟学会

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