コラム

2022/12/22

任意後見契約の3つの類型(将来型・移行型・即効型)について

 任意後見契約には①将来型、②移行型、③即効型の3つの類型があります。どの類型を選択するかは、本人が自由に決めることができます。

 本コラムではこの3つの類型について説明いたします。

将来型について

1 将来型の任意後見契約とは

 任意後見契約のみを締結する類型をいいます。

 現時点では判断能力が衰えておらず、将来、判断能力が低下した場合に備えて任意後見契約をするもので、本人の判断能力低下後に任意後見人のサポートを受けることだけが目的とされています。

 任意後見契約の効力が発効するまでは、特に委任関係は生じないため、本人が自身で財産管理等を行うことになります。

2 将来型の問題点

 将来型は、効力が発生するまでに相当の期間が経過する可能性があり、その間に本人の意思が変わってしまうことも考えられます。また、親族以外の第三者が任意後見受任者となった場合、本人の判断能力が低下したことを把握できず、任意後見監督人の選任申立てが遅れてしまうおそれもあります。よって、本人は任意後見受任者と定期的に連絡を取り、状況を把握してもらう必要があります。

移行型について

1 移行型の任意後見契約とは

 任意後見契約と同時に財産管理や身上保護等の事務を行うことを内容とする委任契約を締結する類型をいいます。

 将来型の任意後見契約では、本人が身体の衰えや病気等で寝たきりになったとしても、判断能力が低下しなければ契約の効果が発生しませんが、この移行型の任意後見契約では、当初は委任契約に基づいて、本人の健康状態を把握するための見守り事務、財産管理事務、身上保護等の事務を行い、判断能力の低下後は任意後見契約に移行して任意後見事務が行われることになります。

 委任する内容は本人の希望に応じて自由に決めることができ、本人の判断能力や身体能力が低下していない状態であれば、受任者は見守り事務だけを行うのが一般的です。

2 契約書作成のポイント

 委任契約の終了事由に本人の判断能力の低下は含まれないため、本人の判断能力が低下して任意後見契約が発効することになったとしても、法律上、委任契約は存続することになります。しかし、そのまま委任契約を存続させることは無意味であるといえるので、任意後見契約の発効を委任契約の終了事由とする旨の契約条項を盛り込んでおくとよいでしょう。

 委任契約書は公正証書で作成することは義務付けられていませんが、実務上、任意後見契約とあわせて一通の公正証書として作成することが一般的です。ただし、公正証書の作成手数料は委任契約と任意後見契約の2通分を要します。

即効型について

1 即効型の任意後見契約とは

 任意後見契約を締結した後、直ちに任意後見監督人の選任申立てを行う類型をいいます。

 すでに本人の判断能力が少し衰えているが、契約を締結する能力があり、すぐにでも支援が必要な場合にこの任意後見契約の即効型を利用することが考えられます。

2 即効型の問題点

 任意後見の即効型を利用したいと考えていても、公証人が本人の意思能力に不安を感じた場合は、契約書の作成を断られる可能性があります。

 公証人は面談等をしながら、本人が任意後見契約の内容を理解しているか確認します。公証人が本人の意思能力に問題があると判断した場合は、任意後見契約を締結することはできません。

 また、任意後見契約が締結されたとしても、本人の判断能力の低下の度合いによっては、契約時に必要な意思能力がないとして、後日、裁判等により契約が無効となる可能性もあります。

 そもそも、任意後見契約は本人の今後の生活に重大な影響を及ぼす契約であるといえるので、たとえ軽度とはいえ、判断能力の低下している本人との任意後見契約の締結は、慎重に検討すべきであると考えられています。

 本人が任意後見制度を理解できているか、また、本人が積極的に任意後見契約を締結したいという意思を有しているのか等が確認できない場合は、任意後見契約ではなく、法定後見制度(補助や保佐)の利用を検討すべきであるといえます。

弁護士 小西 憲太郎

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事

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