コラム

2022/12/19

Webテストを替え玉受験した場合に成立しうる犯罪について

 令和4年11月22日の報道において、就職活動中の女子大生が20歳代の会社員男性に採用試験のWebテストの替え玉受験を依頼し、女子大生の替わりにWebテストを受験したとして、会社員男性が逮捕されたと報じられました。

 本コラムでは、Webテストを替え玉受験した場合に成立しうる犯罪について解説いたします。

筆記テストにおける替え玉受験の違法性

 大学入試などの試験での替え玉受験については、実際に受験した者には私文書偽造罪(刑法159条)、偽造私文書等行使罪(刑法161条)が成立するという扱いが確立しています。

行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。

刑法159条第1項

前二条の文書又は図画を行使した者は、その文書若しくは図画を偽造し、若しくは変造し、又は虚偽の記載をした者と同一の刑に処する。

刑法161条第1項

 判例では、入試の答案は「事実証明に関する文書」に該当するとされています。

入学選抜試験の答案は、試験問題に対し、志願者が正解と判断した内容を所定の用紙の解答欄に記載する文書であり、それ自体で志願者の学力が明らかになるものではないが、それが採点されて、その結果が志願者の学力を示す資料となり、これを基に合否の判定が行われ、合格の判定を受けた志願者が入学を許可されるのであるから、志願者の学力の証明に関するものであって、『社会生活に交渉を有する事項』を証明する文書に当たる

最高裁平成6年11月29日決定

 Webテストの場合、答案は書面ではないので私文書にはあたりません。そのため、電磁的記録不正作出及び供用罪(刑法161条の2第1項・3項)が成立することになります。

人の事務処理を誤らせる目的で、その事務処理の用に供する権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を不正に作った者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

刑法161条の2第1項

不正に作られた権利、義務又は事実証明に関する電磁的記録を、第一項の目的で、人の事務処理の用に供した者は、その電磁的記録を不正に作った者と同一の刑に処する。

刑法161条の2第3項

 電磁的記録不正作出及び供用罪は、情報化社会の著しい進展に伴い、電磁的記録が重要な役割を果たすことになったことから、昭和62年の改正により新設されました。

 今回の事件の場合、替え玉受験を依頼した女子大生についても、共犯として同容疑で書類送検されたとみられています。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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