コラム

2020/11/30

建築紛争における契約書の重要性

建築請負工事について

 注文者が工事業者に対し、建築工事(新築工事やリフォーム工事等)を依頼した場合、通常、工事完成後に注文者が工事業者に対し、請負代金を支払います。

追加工事・変更工事があった場合

 建築工事を行う過程で追加工事や変更工事があった場合、請負代金額についてトラブルになる場合があります。

 工事業者としては、追加工事や変更工事に伴って、追加報酬を請求します。他方、注文者からは、追加工事や変更工事については合意していないとして、追加の工事部分の報酬の支払いを拒絶されることが考えられます。

建築請負工事のトラブルで訴訟になったら

 建築請負工事の代金について、当事者間で協議がまとまらずに訴訟手続になった場合、当事者間の意思、仕事の規模・内容、業界の基準等を総合考慮して、相当な請負代金額を決定していきます。

 この際、工事業者が、証拠として見積書を提出することがあります。しかし、見積書はあくまでも工事内容の見積であって、契約書ではありません。

 そのため、注文者から、「見積書は受け取ったが合意していない」、「見積書は受け取ったがこの見積書のとおりに工事が行われていない」、「そもそも見積書自体受け取っていない」等の反論を行われることが予想されます。

鑑定人の関与

 このような場合、裁判所が選んだ一級建築士等の専門委員が関与して、鑑定を行い、工事内容の相当性を確定させていく場合がありますが、時間と費用がかかってしまいます。

原告の主張立証責任

 民事訴訟の場合、主張立証責任は、原告側にありますので、請負人(工事業者)である原告が、証拠に基づいて、追加工事・変更工事に関する合意の成立を立証しなければなりません。

 民事訴訟における立証とは、「通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るもの」とされていますので、相当ハードルが高いです。

 ですので、追加工事・変更工事の合意を締結したかもしれないし、していないかもしれないという程度では立証責任を果たしたとはいえず、裁判で負けてしまう可能性が高いです。

まとめ

 以上より、建築工事の途中で、追加工事や変更工事が必要になった場合、基本契約書とは別に、適宜、当事者間で契約書や合意書を交わしておくことが重要です。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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