コラム

2023/02/06

解雇予告手当とは

 使用者は、労働者を解雇する際、突然の解雇によって労働者が被る生活の困窮を緩和するために、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、解雇予告手当を支払わなければなりません。

 本コラムでは、解雇予告手当について解説いたします。

解雇予告手当とは

 使用者が労働者を解雇する際の手続については、労働基準法20条に定められており、使用者は労働者を解雇しようとする場合、少なくとも30日前に解雇予告をしなければなりません。また、30日前に解雇予告をせずに労働者を解雇する場合は、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払が義務付けられています(同条1項)。

 また、1日について平均賃金を支払った場合には、上記の予告の日数を短縮することができます(同条2項)。

 解雇予告手当の支給対象となる労働者は、正社員のみならず、パート、アルバイト、派遣社員などの非正規雇用も含まれます。

 有期労働契約において、雇用期間の満了に伴い、雇用契約を更新しない場合、すなわち雇止めの場合においても、厚生労働省の告示「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」において、雇用契約が3回以上更新されている場合や、最初の雇用から1年を超えて勤務継続している場合には、少なくとも30日前までに予告をしなければならない旨定められているので注意が必要です。

解雇予告の内容・方法

 使用者は、解雇を予告するにあたり、労働者がいつ解雇されるのかが明確に認識できるように、解雇の日を特定しなければなりません。

 解雇予告の方法については、特に制限はないため、口頭でもかまいません。もっとも、後のトラブルを避けるためにも、書面による方法が適切だと考えられます。

解雇予告の適用除外となる労働者

 次のいずれかに当てはまる労働者に対しては、解雇予告の規定が適用されません(労働基準法21条)。

  • 日々雇い入れられる者(ただし、雇用期間が1か月以内の場合)
  • 2か月以内の期間を定めて使用される者
  • 季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
  • 試用期間中の者(ただし、試用期間が14日以内の場合)

 また、上記に当てはまらない場合であっても、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合や、労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合において、労働基準監督署長から解雇予告除外認定を受けた場合には、解雇予告手当を支給する必要はありません(労働基準法20条1項但書、同条3項、19条2項)。

解雇予告手当の計算方法

 解雇予告手当の計算方法は、次のとおりです。

解雇予告手当=平均賃金1日分×予告期間が30日に足りなかった日数

 以下、毎月末締めの翌月10日払いという給与体系で、11月10日に11月末日付で解雇すると予告する場合を例に解説いたします。

 なお、平均賃金の計算では銭未満の端数を切り捨て、解雇予告手当の計算では円未満の端数を四捨五入します。

平均賃金1日分の計算方法

 解雇予告手当を計算する際には、まず平均賃金1日分を算出します。平均賃金1日分は、次の計算式によって導き出されます。

平均賃金1日分=解雇予告日の直前の3か月間の賃金の総額÷解雇予告日の直前の3か月間の総日数

 ただし、賃金の締切日が定められている場合は、解雇予告日の直前の賃金締切日から遡って3か月間となります(労働基準法12条2項)。

解雇予告日の直前の3か月間の賃金の総額

 解雇予告日の直前の3か月間の賃金の総額とは、解雇予告日直前の3か月間(締切日が定められている場合は、直前の締切日から遡って3か月間)に、実際に労働者に支払われた賃金(源泉所得税や社会保険料の控除前)の総額になります。

 ただし、この3か月の間に支払われた賃金であっても、以下のものは、賃金の総額に算入されません(労働基準法12条4項)。

  • 臨時に支払われた賃金(慶弔見舞金、私傷病手当、退職金など)
  • 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(6か月ごとに支給される賞与など。なお、賞与であっても3か月ごとに支払われる場合は算入されます。)
  • 法令や労働協約で定められていない現物給与

 また、次の期間は、直前3か月の期間から除外します(労働基準法12条3項)。

  • 業務上のケガや病気により療養するために休業した期間
  • 産前産後休業期間
  • 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
  • 育児・介護休業期間
  • 試用期間

 例の場合、解雇予告日の直前の賃金締切日は10月末日になります。そのため、8月1日から10月31日までの3か月に、解雇予定の労働者に支払われた賃金の総額が「解雇予告日の直前の3か月間の賃金の総額」となります。

解雇予告日の直前3か月間の総日数

 解雇予告日直前3か月間の総日数についても、締切日が定められている場合は、直前の締切日から遡って3か月間の日数の合計となります。また、実際の勤務日数ではなく、暦の日数となる点に注意が必要です。

 例の場合、8月1日から10月31日までの日数の合計が、「解雇予告日の直前の3か間の総日数」となるので、92日となります。

予告期間が30日に足りなかった日数

 予告期間が30日に満たない場合、不足分を計算します。なお、予告期間の起算点は、解雇予告をした日の翌日となります。

 例の場合、解雇予告日の翌日(11月11日)から解雇日(11月30日)までが20日であるため、30日に足りなかった日数は10日となります。

平均賃金の最低保障額

 パートやアルバイトなど時給で働いている場合、労働時間が少ないと賃金総額が少なくなる場合があります。その場合、歴日数で割ると1日分の平均賃金が極端に低くなってしまうため、このような労働者については、平均賃金の最低保障額が定められています(労働基準法第12条1項但書)。

 上記の基本的な計算式から算出された平均賃金と比較し、より金額が高い方が解雇予告手当における平均賃金となります。具体的には、以下の計算式によって導き出されます。

平均賃金の最低保障額=解雇予告日の直前の3か月間の賃金の総額÷解雇予告日の直前の3か月間の勤務日数×0.6

解雇予告手当の支払時期

 解雇予告手当は、即時解雇の場合、解雇と同時に支払う必要があります。

 解雇予告と解雇予告手当を併用する場合(予告期間が30日に満たない場合)は、遅くとも解雇の日までに支払うことが必要です。

解雇予告手当と所得税(源泉徴収)

 解雇予告手当は会計上、給与所得ではなく退職所得に該当します。退職所得は社会保険料や雇用保険の控除対象にはなりませんが、所得税及び復興特別所得税を源泉徴収して、原則として、翌月の10日までに納めなければなりません。

 解雇予告手当を含む退職手当にかかる源泉徴収の算出は、使用者が退職する労働者から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と受けていない場合で異なります。

 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合、「退職所得控除」を適用した退職所得の計算をし、提出を受けていない場合は退職金の20.42%の税率で算出した金額を源泉徴収します。(参照:国税庁「退職手当等に対する源泉徴収」

 また、退職後1か月以内に「退職所得の源泉徴収票」を作成し、税務署長と解雇した労働者に各1通交付しなければなりません(所得税法226条2項)。

解雇予告手当の支払をしなかった場合

 30日前に解雇予告せず、さらに解雇予告手当も支払わなかった場合には、労働基準法違反となり、「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科される可能性があります(労働基準法119条)。

 また、解雇予告手当の未払があった場合、労働者は裁判所に対して未払金と同一額の付加金の支払を命じるよう求めることができます(労働基準法114条)。

 ただし、実際は、裁判において、使用者による法律違反の程度や態様、労働者の不利益の性質や内容などを総合的に判断して、未払の解雇予告手当の額を上限に、裁判所が妥当な金額を決定するため、必ずしも2倍の額が認められるわけではありません。

 使用者が労働基準法20条所定の予告期間(30日)をおかず、また解雇予告手当の支払をせずに労働者に解雇の通知をした場合の解雇の効力については、最高裁昭和35年3月11日判決において、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間を経過するか、または通知の後に解雇予告手当の支払をしたときに解雇の効力を生ずるものと解すべきであるとの判断が示されています。

弁護士 岡田 美彩

所属
大阪弁護士会

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