コラム

2022/04/11

【解決事例】SNSでの名誉棄損に対する損害賠償請求

事案の概要

 SNSで名誉を棄損する投稿がなされたため、書き込みをした者を特定して、損害賠償請求等を行った事案。

手続の流れ

1 投稿記事の削除

 依頼者において、当該SNS上のプラットフォームを利用して、名誉を棄損する投稿の削除を求めたところ、同サイト運営者は、当該書き込みを削除しました。

2 IPアドレスの開示

 弊所において、当該SNSの管理者を特定するため、当該管理者が利用するサーバー会社に対して、弁護士照会制度を利用して、管理者を特定しました。

 当該管理者に対して、発信者情報開示請求書を送付し、各投稿のIPアドレスの開示を受けました。

3 発信者情報開示訴訟

 当該IPアドレスの管理等を行っている経由プロバイダ会社に対して、アクセスログの削除しないことを求める仮処分命令の申立てを東京地方裁判所に提起しました(通常アクセスログは投稿から3か月程度で消えてしまいます。)。

 また、同プロバイダ会社に対して、各投稿のIPアドレスの接続者の氏名及び住所(発信者情報)の開示を求める訴訟を提起しました。

 当方の主張が認められ、発信者情報の開示を認める判決が下されました。

4 損害賠償請求訴訟

 上記3で取得した情報によって特定できた発信者に対して、損害賠償の支払いを求める訴えを提起しました。

 審理の結果、当方の主張が概ね採用され、

  • 心療内科の通院治療費相当額 3万5700円
  • 慰謝料 50万円
  • 弁護士費用 10万7140円
  • 合計 64万2840円

 の請求が認容されました。

5 刑事告訴

 また、依頼者は、発信者情報の開示を受けた後、当該発信者を刑事告訴しました。

 当該発信者には罰金の有罪判決が下されたとのことです。

コメント

 近頃、SNSにおける名誉棄損に関するトラブルが増加しています。

 本件は、名誉を棄損する投稿がなされた場合に取り得るべき手続をほぼ全て行ったものになります。

 本件のように、適切な手続きを取ることができれば、投稿者を特定し、損害賠償請求を行うことが可能です。もっとも、本件は、最初のご相談から、勝訴判決が出るまで2年程度の時間がかかりました。

 また、名誉を棄損する投稿を行った発信者は、損害賠償の責任を負うだけでなく、刑事責任も負うことになります。

 このように、他人の名誉を毀損する投稿をすると、書き込みをされた方が大変辛い思いをされることはもちろんのこと、書き込みをした方も相応の責任を負うことになります。

 インターネット上で簡単に投稿ができる環境だからこそ、投稿を行う前に、もう一度冷静になって、当該投稿が他人の名誉や権利を侵害してしまうものではないか否かを考えていただければと思います。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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