コラム

2022/04/25

遺言の解釈

 遺言書に書かれた内容が不明確であっても、既に遺言者は死亡しているため、その内容を本人に確認することは不可能です。そこで遺言者の意思がどのようなものであったのか、その真意を探究することが求められています。

遺言解釈の主な判例

 最高裁昭和58年3月18日判決は、

「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」

と判示しています。

 このように遺言者の真意を可能な限り探求し、実現することが求められています。

「相続させる」遺言から特定財産承継遺言へ

 遺言実務上、相続人に対して財産を承継させる場合には、財産を「遺贈する」という表記ではなく、「相続させる」という表記を用いるのが一般的です。
 「相続させる」遺言は、財産の承継方法を決定するものであることは明らかですが、その法的性質をいかに解釈するかが問題となっておりました。
 令和元年7月1日施行の改正相続法は、「相続させる」遺言について、「特定相続遺言」という名を定め、効力について定めています。

過去の裁判例

最判平成3年4月19日

 遺産を特定の相続人に 「相続させる」 遺言は、「遺言書の記載から、その趣旨が遺贈であることが明らかであるか又は遺贈と解すべき特段の事情のない限り、その遺産について、相続人に単独で取得させる旨の遺産分割の方法が指定されたものであると解釈すべき旨を判示しています。
  そして、「相続させる」遺言があった場合には、相続によるその遺産の承継を相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時に直ちに承継される」と結論付けました。

最判平成7年1月24日・最判平成10年2月27日

 特定の不動産を特定の相続人甲に相続させる旨の遺言により、相続人が被相続人の死亡とともに相続により当該不動産の所有権を取得した場合には、当該相続人が単独でその旨の所有権移転登記手続をすることができ、遺言執行者は、遺言の執行として右の登記手続をする義務を負うものではないとの判断がなされました。

最判平成11年12月16日

 特定の不動産を特定の相続人に相続させる趣旨の遺言がされた場合において、他の相続人が相続開始後に当該不動産につき被相続人から自己への所有権移転登記を経由しているときは、遺言執行者は、その所有権移転登記の抹消登記手続のほか、特定の相続人への真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続を求めることができるとの判断がなされました。

特定財産承継遺言

 改正相続法では、特定財産承継遺言と概念を設けています。

遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第899条の2第1項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

民法1014条第2項

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

民法第899条の2第1項

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