コラム

2021/11/08

交通事故による損害額の算定⑥ 〜減額事由〜

 交通事故が発生した際、被害者に生じた損害すべてを加害者が賠償するわけではありません。すべての損害を加害者が負担することが不公平だと認められた場合、一定の割合で減額されることがあります。
 このような減額事由として、過失相殺、無償(好意)同乗、素因減額があります。

過失相殺

過失相殺(民法722条2項)の規定による損害賠償額の減額

 法律上の不法行為に基づく損害賠償請求権(民法709条)については、「被害者に過失があったときは、裁判所はこれを考慮して損害賠償の額を定めることができる」(民法722条2項)とされています。
 この規定に基づいて、訴訟では、事故の発生原因について被害者の過失もあるならば、その過失の割合に応じて損害賠償額が減額されることがあります。例えば、被害者(自動車)が一時停止せずに道路に飛び出す、または歩行者が信号無視で横断歩道を歩く等、事故の原因について加害者にだけ損害を賠償させることが公平とはいえない場合には、訴訟において裁判所が損害賠償額を定める際に、損害賠償額を減額することができるとされているのです。
 なお、自賠責保険の保険金支払基準では、被害者に「重大な過失」がある場合に限り減額されるとされています(自動車損害賠償保障法16条の3、平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)。

過失割合の認定基準

 過失相殺による減額は、損害額に対する減額の割合という形で示されます(これを「過失割合」と呼びます。)。過失割合については、裁判所の判決では「認定された具体的事実を踏まえると、○割の過失相殺をするのが妥当である」と表現され、被害者が得られる賠償金の額に大きく影響することから、過失割合は非常に重要な争点となります。
 しかし、この過失割合の決定方法についての法令の規定はなく、一瞬で生じた事故における被害者の落ち度を単純な数値で表現することは非常に困難といえます。そこで、損害賠償額の算定基準の一部として、事故の類型ごとに過失割合を定めた過失割合認定基準が作られるようになりました。かつては裁判所が自ら基準を発表していましたが、現在は日本弁護士会が裁判例を検討・分析して作成された過失認定基準があり、保険会社も弁護士もその基準に基づいて過失割合を決定することが一般的となっています。
 具体的な基準の内容は、日弁連交通事故相談センターが発行する「交通事故損害額算定基準」などの書籍において公表されています。そこでは非常に細かな事故の類型が示されていますが、大まかな構成としては

  1. 歩行者と車両
  2. 四輪車と四輪車
  3. 単車と四輪車
  4. 自転車と四輪車
  5. 高速道路上の事故

という事故の主体によって分類され、さらに事故の態様や道路状況に応じた過失割合が設定され、事故当事者の交通違反などの細かな修正要素も設定されています。この過失割合基準の中から自分の事故と類似するものを探し出し、過失割合の目安とすることができます。

無償(好意)同乗

 無償(好意)同乗とは、好意または無償で他人を自動車に同乗させることをいいます。
 例えば、甲が学校の帰りに友人である乙に車で家まで送ってくれと頼み、乙の車に乗せてもらうような場合です。
 上記の事例の場合、帰り道の途中、乙の不注意(過失)で事故にあい、甲が大怪我をしてしまったときに、甲が乙に対し損害賠償を請求できるかが問題となります。
 このような場合、単なる好意(無償)同乗では、減額事由になりません。無免許運転や飲酒運転であることを知っていながら同乗したなど、危険な運転状態を容認し、あるいは危険な運転を助長、誘発した場合には、減額事由となります。

小西法律事務所

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