コラム

2021/02/25

成年後見と任意後見の違い

 認知症や精神障害等によって判断能力が欠けている人を支援するための制度として後見制度があります。成年後見という言葉を耳にされたことがある方も多いと思います。

 本コラムでは後見制度について説明します。

後見の種類

 後見には法定後見制度と任意後見制度があります。

法定後見制度

 後見人の選任・権限は家庭裁判所の審判によって決定されます。

 後見人とは判断能力が低下している人に代わって法律行為をしてくれる人です。

任意後見制度

 後見人の選任・権限は契約によって決定されます。

法定後見制度の種類

成年後見制度

 精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害等)により判断能力が欠けている人(成人)を、家庭裁判所が選任した成年後見人によって支援するための制度。

 本人の判断能力のレベルによって「成年後見」「保佐」「補助」という3つのレベルに分けられています。

未成年後見制度

 親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がない場合に、家庭裁判所が選任した未成年後見人によって、未成年者を保護するための制度。

成年後見と任意後見の違い

「人」の違い

 成年後見は家庭裁判所が審判によって後見人を決定するため、誰が後見人になるか分かりません。
家庭裁判所に対し、後見人になって欲しい人を推薦することが出来ますが、必ずしもその人が後見人に選ばれるとは限りません。
推薦した人が相当ではないと判断されたり、推薦がなかった場合は、第三者である弁護士や司法書士が後見人に選任されます。

 任意後見は成年後見と異なり、後見人の選任は契約によって行うことが出来ます。
そのため、後見人になって欲しい人に予めお願いをして契約を結んでおけば、その人の後見人になってもらうことが出来ます。

「財産管理・身上監護の内容」の違い

 成年後見人の仕事の内容は、本人の意思を尊重し、かつ本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、必要な代理行為を行うとともに,本人の財産を適正に管理していくこととされており、実務上は若干硬直的です。

 対して、任意後見の場合は、財産管理や身上監護の内容を予め決めておくことができるので、認知症等になる前の本人の意思が柔軟に反映されます。

 例えば、相続税対策として毎年相当額を孫に贈与したいと思っていた場合、成年後見人がそのような贈与行為を行うことは一般的に難しいですが、任意後見の場合、契約書にその旨を記載しておけば、認知症等によって判断能力がなくなった後も、任意後見人によって贈与行為を続けてもらうことが可能になります。

任意後見契約の締結時期

 任意後見契約は契約という法律行為であるため、その契約を締結するにあたって判断能力が必要になります。

 よって、将来の認知症対策の為に任意後見を検討されている方は、判断能力があるうちに契約を締結しておかなければなりません。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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