コラム

2021/02/15

【相談事例】パワハラ・セクハラに対する慰謝料及び謝罪請求

相談の概要

 相談者Xは勤務先の会社Y1の上司Y2から、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントを受け、うつ状態になってしまい、休職期間を経た後、退職することを決意しました。

 相談者Xは、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントをしてきた上司Y2がどうしても許せず、上司Y2に対して、慰謝料請求をした上で、謝罪を求めたいと考えていました。

 しかし、証拠といった証拠はなく、他の従業員たちに証言を頼めるかどうかもわからないため、①このような場合であっても、上司Y2に慰謝料を請求した上で、謝罪を求めることはできるのか、②次に上司Y2に会う際に、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの事実を認めるような発言をさせ、それを録音すれば証拠として使えるのか等を相談するため、弊所へお越しになられました。

弁護士の回答

 勤務先会社Y1の上司Y2のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントが原因で、うつ状態になってしまったのであれば、まずは交渉で、上司Y2に対して慰謝料を請求したり、謝罪を求めたりすることが考えられます。

 また、会社Y1が上司Y2のパワーハラスメントやセクシャルハラスメントの事実を知りながら対策を講じなかったような場合には、上司Y2だけでなく、会社Y1に対しても、使用者責任(民法715条)や安全配慮義務違反(労働契約法5条、民法415条)を理由に、損害賠償を請求することも考えられます。

 交渉の段階で、会社Y1や上司Y2がパワーハラスメントやセクシャルハラスメントがあった事実を認めれば、証拠があまりなくても問題はありません。

 しかし、会社Y1や上司Y2が、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントがあった事実を否定した場合、任意での慰謝料の支払や謝罪は期待できなくなってしまいます。

 その場合、裁判を起こす他ないのですが、そうなると裁判所は証拠がなければパワーハラスメントやセクシャルハラスメントがあった事実を認定してくれません。

 なお、仮に他の従業員の証言等により、上司Y2によるパワーハラスメントやセクシャルハラスメントがあった事実が認定されたとしても、上司Y2に慰謝料を請求することはできるものの、強制的に謝罪をさせることはできません。

 また、今後、退職の手続き等で再度上司Y2に会う機会があり、その際に、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの事実を認めるような上司Y2の発言を録音等することができれば、交渉や裁判の際に証拠として使用することができると考えられます。

弁護士 岡田 美彩

所属
大阪弁護士会

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