会社の支配権をめぐる紛争と議決権行使の実務
株式会社における経営支配権をめぐる紛争が発生した際、議決権の行使方法や株主総会の運営について、さまざまな法的問題が生じます。原則として「1株1議決権」が維持される一方で、支配権争いの状況下では、特定の株主による議決権行使の制限や、代理人資格の限定、さらには不統一行使の可否といった点が問題となります。これらの制度は、株主総会の適正な運営を確保するとともに、株主の意思を適切に反映する観点から、法令及び定款に従って運用する必要があります。
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会社の支配権争いが問題となる場面
特定の株主と現経営陣との対立がある中で、会社が新株や新株予約権を発行した場合、その発行が現経営陣の支配権を維持することを主な目的とするものではないかが問題となることがあります。また、買収への対抗措置が講じられた場合にも、その必要性や相当性が争われることがあります。このような会社の行為について差止めなどが申し立てられた場合、裁判所は、株式の取得状況、取締役の選解任をめぐる対立、当事者の公表内容、会社の行為が持株比率に与える影響などを踏まえ、具体的な行為の適法性を判断します。
議決権行使の基本原則とその制限
株主は、原則として1株につき1個の議決権を有します。ただし、当該株式会社が、その株主である会社の総株主の議決権の4分の1以上を有するなど、その株主を実質的に支配し得る関係にある場合には、その株主が保有する当該株式会社の株式には議決権が認められません。また、会社が保有する自己株式にも議決権はありません。
代理人による議決権行使と資格制限の有効性
株主は代理人によって議決権を行使できますが、多くの会社では定款で代理人資格を株主に限定しています。最高裁はこの制限について、株主以外の第三者による総会の攪乱を防止し、株主総会を適正に運営するため合理的理由があるとして有効性を認めています。もっとも、代理人資格を株主に限定する定款規定がある場合でも、その適用が常に許されるとは限りません。会社の属性、代理人の立場、総会を攪乱するおそれの有無その他の具体的事情を踏まえた個別判断が必要となります。会社が違法に代理行使を拒絶した場合には、株主総会決議の取消事由となる可能性があります。
議決権の不統一行使と実質株主の取扱い
株主は、その有する議決権を統一しないで行使することができます。例えば、信託銀行等が複数の受益者等のために株式を保有し、それぞれの意向に応じて議決権を行使する場合が、典型的な不統一行使の例です。もっとも、取締役会設置会社では、株主総会の日の3日前までに、不統一行使をする旨とその理由を会社に通知しなければなりません。また、株主が他人のために株式を保有する者でない場合には、会社は不統一行使を拒むことができます。なお、会社は、不統一行使を拒むことができる場合であっても、これを認めることは可能です。
また、株主名簿上の株主と実質的な出資者が異なる場合でも、実質的な出資者が当然に株主として議決権を行使できるわけではありません。名義株主から代理権を授与された実質的な出資者について、株主総会への出席及び議決権行使が認められるかは、定款における代理人資格の制限や具体的事情を踏まえて判断されます。
買収防衛策と株主意思の尊重
支配権争いの局面で買収防衛策その他の対抗措置を講じる場合には、株主意思の尊重だけでなく、対抗措置の必要性・相当性や手続の公正性・透明性が重要となります。
買収者や対象会社の取締役等の議決権を除外して一般株主の意思を確認する、いわゆるMoM型の決議について、東京機械製作所事件では、具体的事情の下で直ちに不合理とはいえないと判断されました。もっとも、このような手続は買収者の議決権を排除するものであるため、非常に例外的かつ限定的な場合にのみ許容されると考えられています。
結論
経営支配権をめぐる紛争では、議決権数、代理行使、不統一行使及び株主意思確認の各手続を、法令及び定款に従って正確に運用することが重要です。とりわけ買収防衛策その他の対抗措置を講じる場合には、株主意思の確認に加え、措置の必要性・相当性、十分な情報提供及び手続の公正性を確保しなければ、株主総会決議や対抗措置の適法性が争われるおそれがあります。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士 小西 憲太郎
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
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