コラム

2026/08/17

少数株主からの請求・要求にどう対応すべきか

少数株主による権利行使には、剰余金配当に関する提案をはじめとする株主提案、株主名簿や会計帳簿の閲覧請求、臨時株主総会の招集請求など、さまざまなものがあります。株主がこれらの権利を具体的に行使した場合、会社としても、単なる意見交換の段階ではなく、法的な対応を要する局面に入ったものと認識し、慎重に対応する必要があります。特に非公開会社においては、経営監視や株式買取交渉の材料としてこれらの権利が利用される実態があり、請求の目的や適法性を精査しつつ、専門家と連携した組織的な対応が不可欠です。

株主提案・権利行使への対応

アクティビストや少数株主が、会社との意見交換にとどまらず、株主提案、株主名簿や会計帳簿の閲覧請求、臨時株主総会の招集請求など、会社法上認められた権利を具体的に行使することがあります。このような請求がなされた場合、会社は、その目的や法定の要件を確認した上で、適切に対応する必要があります。 株主提案権には、株主総会の議題を提案する権利、株主総会の場で議案を提出する権利、議案の要領を他の株主に通知するよう求める権利があります。これらは、株主が会社の経営に関する事項を株主総会で取り上げ、他の株主に判断を求めるための重要な権利です。

会計帳簿閲覧請求への実務的対応

中小企業や非公開会社において、総株主の議決権または発行済株式の3%以上を有する少数株主が、交渉材料の確保や証拠資料の入手を目的として「会計帳簿の閲覧・謄写請求(会社法433条)」を行うことがあります。株主側は、取締役の不正を疑わせる支出を指摘することで、株式の高値買取を迫るなどの交渉を優位に進めることを意図する場合があります。これに対し会社側は、以下の点に留意して対応する必要があります。

  • 請求理由の具体性チェック
    株主は請求理由を明らかにする必要があります。判例によれば、請求理由は、調査の対象となる行為や事実と、閲覧を求める会計帳簿等との関連性が理解できる程度に、具体的に記載しなければなりません。もっとも、請求理由の基礎となる事実が客観的に存在することまで立証する必要はありません。包括的・抽象的な請求に対しては、理由を具体的に説明するよう求める必要があります。
  • 拒絶事由の確認
    権利の確保・行使に関する調査以外の目的による請求、会社の業務遂行を妨げて株主共同の利益を害する目的による請求、請求者が会社と実質的な競争関係にある事業を営んでいる場合など、法定の拒絶事由に該当するときは、会社が請求を拒絶できることがあります。
  • 機密・個人情報の保護
    開示に際しては、目的外利用を行わない旨の合意書を取り交わすなど、企業機密や個人情報の保護に配慮した対応を検討する必要があります。

株主名簿の閲覧請求と委任状勧誘への備え

株主名簿の閲覧・謄写請求は、株主提案の行使期限前後に、委任状勧誘(プロキシファイト)に向けた票読みや、賛同する他の株主を募る目的で行われることがあります。株主提案への賛同や委任状を他の株主に求める目的であることのみを理由として、直ちに閲覧請求を拒絶することはできないと考えられています。なお、会計帳簿閲覧請求とは異なり、請求者が会社の競業者であること自体は、株主名簿閲覧請求の法定の拒絶事由とはされていません。株主名簿の閲覧請求があった場合、会社は、自社の株式取扱規則に定められた手続に従い、本人確認書類等の必要書類を確認した上で、適法な請求には応じることになります。また、株式買取業者が請求を行う場合、他の株主に批判的な情報を伝え、既存株主との関係を悪化させるリスクにも留意が必要です。

株主提案があった場合の具体的な審査フロー

株主提案を受けた際、提案の種類や会社の機関設計に応じて、以下の点を確認します。

  • 資格審査
    取締役会設置会社における議題提案権及び議案要領通知請求権については、原則として、総株主の議決権の1%以上または300個以上の議決権を有し、株主総会の日の8週間前までに請求することが必要です。また、公開会社では、原則として6か月前から継続して株式を保有していることも必要となります。これに対し、取締役会非設置会社や、株主総会の場で議案を提出する場合には、要件が異なります。
  • 内容の審査
    提案内容が法令・定款に違反していないか、また、実質的に同一の議案が過去3年以内に提出され、その議案について議決権を行使することができる株主の議決権の10%以上の賛成を得られなかったものに該当しないかなどを確認します。


適法な議題提案や議案要領通知請求がなされた場合、会社は、提案された議題や議案の要領を招集通知に記載するなど、法令に従った措置を講じる必要があります。不適法な提案については、取り上げる義務はありません。また、取締役会が株主提案に対し、相当な範囲で反対意見を表明することは適法とされています。

反対株主による株式買取請求への対応

企業再編や株式への譲渡制限の設定など、会社の基礎的な変更に反対する株主には、一定の場合に会社法上の株式買取請求権が認められています。株主総会の決議を要する場合には、原則として、株主が総会に先立って反対の意思を通知し、総会でも反対することが必要となるため、会社は、その経過を適切に記録・確認する必要があります。ただし、株主総会で議決権を行使できない株主などについては、異なる取扱いとなる場合があります。買取価格は、まず株主と会社との協議により決定され、協議が調わない場合には、所定の期間内に裁判所へ価格決定を申し立てることができます。
また、スタートアップの投資契約において、契約違反等があった場合に投資家が発行会社や経営株主に株式の買取りを求める条項が設けられることがあります。経営株主個人に安易に買取義務を負わせることは、起業家に過大な負担を生じさせるため、抑制的に検討すべきであると考えられています。

結論

少数株主からの請求への対応は、単なる事務手続ではなく、会社経営の安定性にも関わる重要な問題です。会社側は、株主の権利を尊重しつつ、請求の理由や法定の要件を適切に確認し、濫用的な権利行使については、法定の拒絶事由に該当するかを慎重に検討する必要があります。一貫した対応と適切な情報開示を通じて、株主共同の利益を確保することが重要です。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。

弁護士 小西 憲太郎

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事

この弁護士について詳しく見る