日本酒の種類
日本酒の表示には清酒、純米大吟醸、純米酒、特別純米酒など様々な表示があります。
本コラムでは、それらの表示が法的にどのような基準で分類されているのか解説します。
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清酒とは
清酒は日本酒と呼ばれることも多いですが、酒税法上では清酒と呼ばれ、酒税法において下記の要件を満たした酒類で、アルコール分が22度未満のものをいいます(酒税法3条7号)。
- 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
- 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの(その原料中当該政令で定める物品の重量の合計が米(こうじ米を含む。)の重量の百分の五十を超えないものに限る。)
- 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの
清酒は使用できる原料が決められています。その他政令で定める物品とは、醸造アルコールや糖類、有機酸、アミノ酸塩などで、その使用量には制限が設けられています。
「こす」とは、その方法のいかんを問わず、酒類の「もろみ」を液状部分とかす部分とに分離するすべての行為を指します。
清酒には、「米」、「こす」という要素が必要となります。
そのため、米、米こうじ、水を原料として発酵させた「どぶろく」は「その他の醸造酒」(酒税法7条4号ハ)に該当することになり、清酒とは表示できません。
なお、製品名に「にごり酒」、「おりがらみ」、「どぶ」などが含まれていても、こすという過程が加えられているものは、「清酒」または「日本酒」に分類されます。
清酒と日本酒の違い
清酒の中でも、日本酒とは、原料の米に日本産米を用い、日本国内で醸造したもののみをいい、こうした「日本酒」という呼称は地理的表示(GI)として保護されています。
【地理的表示(GI)とは】
地理的表示(GI:Geographical Indication)は、WTOの協定が定める知的財産権の一つであり、特定の産地ならではの酒類の特性(品質等)が確立されている場合に、当該産地内で生産され、一定の生産基準を満たした商品だけが、その産地名を独占的に名乗ることができる制度です。
「日本酒」は日本の明確な四季と結びつき発展してきた酒類で、貴重な米から製造される特別な飲料として、伝統的に国民生活・文化に深く根付いてきました。このような歴史的・文化的背景等から、国税庁は日本酒の価値を保全していくため、平成27年に地理的表示として「日本酒」を指定・保護しています。
特定名称酒
清酒の中でも所定の要件を満たしたものは「特定名称酒」と呼ばれ、表示分類は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の6第1項の規定に基づき、清酒の製法品質表示基準を定める件(平成元年11月国税庁告示第8号)によって定められています。
特定名称酒は、大きくは吟醸酒・純米酒・本醸造酒の3種類に分けられ、原料や製造方法などの違いによってさらに8種類に分類されます。以下で、特定名称酒の表示分類について解説いたします。
なお、特定名称酒は、製法品質の要件を満たしている清酒について表示ができるものであり、その表示を義務付けるものではありません。酒造メーカーによっては、あえて、「純米大吟醸」などの表示をしないところもあるようです。
⑴造り方による違い
精米歩合60%以下の白米、米こうじ及び水、又はこれらと醸造アルコールを原料とし、吟味して製造した清酒で、固有の香味及び色沢が良好なものが吟醸酒です。
「吟味して製造した清酒」とは、精米歩合60%以下に精米した白米を使用し、低温でゆっくり発酵させ、かす歩合を高くしたもの等いわゆる吟醸造りにより製造した清酒をいいます。
「香味及び色沢が良好なもの」とは、異味異臭がなく清酒固有の香味及び色沢を有するものをいうものとされています。
吟醸酒の中でも、精米歩合50%以下の白米を原料として製造し、固有の香味及び色沢が特に良好なものが「大吟醸酒」です。
なお、「吟醸酒」を「吟醸」と「酒」を省略したり、「吟醸清酒」「吟醸日本酒」(日本酒の表示を使用することができる場合に限ります)と「酒」を「清酒」「日本酒」に変更したりして表示することもできます。
【精米歩合とは】
精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいいます。精米歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取ることをいいます。
通達では、精米歩合の表示について、「精米歩合」の文字の後に続けて使用した白米の精米歩合を1%未満の端数を切り捨てた数値(精米歩合が1%未満のものにあっては、「1%未満」の文字)により表示するものとし、精米歩合の異なる複数の白米を使用した場合には、精米歩合の数値の一番大きいものを表示するものとするとされています。
⑵醸造アルコールの有無による違い
本醸造酒とは、精米歩合70%以下の白米、米こうじ、醸造アルコール及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なものをいいます。
純米酒とは、精米歩合70%以下の白米、米こうじ及び水を原料として製造した清酒で、香味及び色沢が良好なものをいいます。純米酒には、原料として醸造アルコールが含まれていません。
前記の定義のとおり、吟醸酒には、醸造アルコールを原料としたものとそうではないものが含まれることになります。そして、吟醸酒のうち、米、米こうじ及び水のみを原料として製造したものに「純米」の用語を併せて用いることができますので、「純米吟醸酒」、「純米大吟醸酒」という表示もできます。「吟醸酒」という表示でも、醸造アルコールが原料とされていないものもありますので、原材料名の確認もしてみましょう。
特定名称酒に含まれる醸造アルコールは、白米総重量の10%未満と厳しく制限されています。
⑶精米歩合等による違い
純米酒又は本醸造酒のうち、香味及び色沢が特に良好であり、かつ、その旨を使用原材料、製造方法その他の客観的事項をもって当該清酒の容器又は包装に説明表示するもの(精米歩合をもって説明表示する場合は、精米歩合が60%以下の場合に限る。)に「特別純米酒」又は「特別本醸造酒」の名称を用いることができます。
⑷まとめの表
〈出展:国税庁 「清酒の製法品質表示基準」の概要〉
その他の清酒
上記の特定名称酒8種の分類のいずれにも該当しない清酒は、「普通酒」または「一般酒」などと呼ばれます。
弁護士 石堂 一仁
- 所属
- 大阪弁護士会
大阪弁護士会 財務委員会 (平成29年度~令和5年度副委員長)
大阪弁護士会 司法委員会(23条小委員会)
近畿弁護士会連合会 税務委員会 (平成31年度~令和5年度副委員長、令和6年度~委員長)
租税訴訟学会
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