コラム

2023/04/06

親族間の扶養義務について

扶養義務とは

 扶養義務とは、一定範囲内の近親者が、自己の資産や労働のみでは自立した生活を送れない人を経済的に援助する義務のことをいいます。また、扶養権利者(扶養されるべき人)は、扶養義務者(扶養義務を負っている人)に対して、経済的援助を求めることが出来ます。

 扶養義務は、生活保持義務と生活扶助義務の二つがあると解されています。

 生活保持義務とは、扶養義務者自身と同じ水準の生活を、被扶養者にも保障する義務をいいます。被扶養者の配偶者と、未成年の子どもである被扶養者の両親が生活保持義務を負います。

 これに対して生活扶助義務とは、扶養義務者自身の生活は通常どおり送れることを前提として、その余力の範囲内で、被扶養者を扶養する義務をいいます。たとえば兄弟姉妹や、成人済みの子どもに対する両親が負う扶養義務は、この生活扶助義務ということになります。

扶養義務者の範囲

 扶養義務は、誰もが負っているわけではありません。

① 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

② 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

③ 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

民法877条

 このように、民法877条では、直系血族と兄弟姉妹は当然に扶養義務を負うと定めています。直系血族とは、父母・祖父母・曾祖父母・子ども・孫・ひ孫などが該当します。

 なお、兄弟姉妹が結婚して戸籍から外れた場合であっても、被扶養者との間で法律上の兄弟姉妹関係は残ります。

 また、民法752条では配偶者にも扶養義務があることを定めています。

夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

民法752条

 民法877条2項に定められている、3親等内の親族が扶養義務を負うことになるのは、原則的に扶養義務を負う直系血族と兄弟姉妹、配偶者に経済力がないような特別な場合のみです。この場合、家庭裁判所が審判によって3親等内の親族を扶養義務者とすることができます。

扶養義務の順位

 扶養義務者が複数人いる場合には、扶養の順位は、扶養義務者間での協議によって定めるのが原則です。ただし、協議が調わない場合や、そもそも協議をすることができない場合には、家庭裁判所によって扶養の順位が定められます。

扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

民法878条

裁判例

扶養を要する未成年の子に父母があるときは、特段の事情のない限り、その父母は、その子の他の直系血族に先んじて扶養義務を負担すべく、その扶養義務は、単なる生活扶助義務ではなく、いわゆる生活保持義務であって、父母が離婚している場合の未成年の子に対する父母の扶養義務の性質もまた右と変ることなく、この場合父母のうち、子に対し親権を有する者、又は生活を共同にする者が、扶養義務につき当然他方より先順位にあるものではなく、両者は、その資力に応じて扶養料を負担すべきものであると解するを相当とする。

大阪高裁昭和37年1月31日決定

親権を有し、もしくは子と生活を共同にする親に第一次の扶養義務があり、親権を有せず、または子と生活を共にしない他方の親の扶養義務は第二次的か、もしくは単なる生活扶助義務にすぎないとする説もないではないが、当裁判所はこの説をとらない。なぜなら親権の主たる内容である監護教育義務もしくは親子の生活共同の現実と、経済的な負担としての扶養義務とは必ずしも一致しなければならないものではなく、経済的に余裕のない一方の親が子と生活を共にし監護教育の責を負い、資力に余裕のある他方の親が子の生活費、教育費等を負担すべき場合もあり得て当然だからである。

仙台高裁昭和37年6月15日決定

扶養料の請求

 民法上は扶養義務の具体的な内容までを定めているわけではありません。現実には協議で決めるか、家庭裁判所での調停・審判手続を利用することになります。

協議

扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

民法879条

 扶養の程度や方法については、当事者間での協議を原則としています。

調停・審判手続き

 協議が調わない時は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または、当事者が合意で定める家庭裁判所に対し調停(審判)を申し立てます。

 なお、法定の扶養義務者が複数いる場合であっても、すべての扶養義務者を相手方とする必要はありません。

 手続には、収入印紙と予納郵券が必要となります。収入印紙は扶養権利者1名につき1,200円必要となり、予納郵券は管轄裁判所ごとに異なりますので、申立てを予定している管轄裁判所にお問い合わせください。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

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