任意後見契約公正証書の作成手続について
任意後見制度とは、将来自分の判断能力が減退した場合に備えて、本人が判断能力のあるうちに、本人自らが選んだ任意後見人(受任者)との間で、公正証書により委任契約をしておく制度です。本コラムでは、任意後見契約公正証書の作成手続きについてご説明いたします。
任意後見契約公正証書案の作成
1 任意後見人となる人を決める
自分が信頼できる人物を選び、将来の任意後見人を引き受けてもらいます。
但し、任意後見契約の効力を発効させる時点で、任意後見受任者が次に該当する場合は任意後見監督人が選任されないため任意後見契約は発効しません。(任意後見契約に関する法律第4条1項3号)
- 未成年者
- 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
- 破産者
- 行方の知れない者
- 本人に対して訴訟をし、又はした者及びその配偶者並びに直系血族
- 不正な行為、著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者
したがって、任意後見契約発効時における任意後見人の年齢や生活状況等をよく考え、後見人となる人を決める必要があるといえます。
任意後見人は生活全般に関わる業務を行うので、業務を行える心身の能力を備えており、委任者に関わる人たちと信頼関係を築ける人であることが望ましいでしょう。
任意後見受任者は複数選任することも可能です。その場合は任意後見受任者ごとに契約を締結することが必要ですが、公正証書は一括して一通作成することができます。
2 契約内容について決める
財産管理(預貯金の管理等)や身上保護(委任者の生活、療養看護に関する事務等)等、支援してもらう内容について話し合って決めます。
公証役場へ契約書案と必要書類を提出
任意後見契約公正証書案ができたら、必要書類と併せて、公証役場へ提出します。なお、必要書類は公証役場で確認することができます。
公証役場で契約書を作成
公証役場と日程を調整し、当日は、委任者と任意後見受任者は公証役場へ赴きます。なお、2025年10月より、要件を満たす場合には、ウェブ会議(ビデオ通話)を利用して、公証役場に行かずに作成する「リモート方式」も導入されました。ただし、任意後見契約は本人の判断能力の確認が特に重要であるため、原則として公証人による直接の面接(対面)が求められる運用がなされています。委任者が病気等で公証役場へ赴くことができない場合は、公証人が本人の家や病院へ出張して作成することも可能です(但し出張費が発生します)。
公証人は、委任者本人に契約締結の意思能力があるかどうか、本人と面接を行い確認します。場合によっては、医師の診断書や関係者(福祉関係者、家族等)からの供述を参考に判断します。
意思能力は一般的には7歳から10歳くらいの精神的能力といわれていますが、任意後見契約締結の場合は締結時において、契約の内容について認識や判断をすることができるレベルであることが必要です。
委任者と受任者は公証人が準備した任意後見契約公正証書の内容を確認し、間違いがなければ電子サインをして任意後見契約公正証書を完成させます(2025年10月より、公正証書は、原則として電磁的記録で作成されることとなりました。)。
締結した任意後見契約公正証書の原本は、原則として電子データで作成され、公証役場(システム上)において保管されます。また、意思能力の確認のために提出された診断書等も、あわせて保管されることになります。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士 小西 憲太郎
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
この弁護士について詳しく見る


前の記事へ