コラム

2022/10/17

少年法改正について

 「少年法等の一部を改正する法律」(改正少年法)が、令和3年5月21日に成立し、令和4年4月1日に施行されました。

 今回の法改正のポイントをわかりやすく解説いたします。

少年法とは

 この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする。(少年法第1条)

 少年法は、非行行為を行った少年の健全な育成を図るために、これを保護する処遇を決める少年審判の手続きと、その例外として少年に成人と同様の刑事裁判で刑事責任を問う場合の特例を定めた法律です。

この法律において「少年」とは、二十歳に満たない者をいう。(少年法第2条第1項)
 少年法の適用対象となる「少年」とは、20歳に満たない者を指します。

少年事件手続きの一般的な流れ

 非行行為を行った20歳未満の少年のうち、14歳以上で犯罪を犯した者を「犯罪少年」と呼びます。一般的な犯罪少年の事件手続きは、下記の図を御覧ください。

少年法改正のポイント

 選挙権年齢や民法の成年年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18、19歳の者は、社会において責任ある主体と積極的な役割を期待される立場となりました。

 一方で18、19歳の者は、成長途上の年齢でもあり、罪を犯した場合にも適切な教育や処遇による更生が期待されます。

 そこで今回の少年法改正では、18、19歳の者も引き続き少年法の適用対象としながらも、その立場に応じた扱いとするため、「特定少年」として17歳以下の少年とは異なる特例を定めることとなりました。

原則逆送規定の拡大

 逆送とは、家庭裁判所が、保護処分ではなく、懲役、罰金などの刑罰を科すべきと判断した場合に、事件を検察官に送ることをいいます。

 また、原則逆送対象事件とは、家庭裁判所が原則として逆送しなければならないとされている事件のことを言い、改正前の少年法では、16歳以上の少年のときに故意で被害者を死亡させた事件が該当していました。

 今回の法改正によって、特定少年が犯した法定刑の下限が1年以上の懲役・禁錮にあたる罪(強盗罪、強制性交等罪、強制わいせつ致傷罪、組織的詐欺罪など)の事件が追加されました。

実名報道を含む報道規制の解除

 少年法では、少年審判や刑事裁判を受けることとなった少年については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によって本人を推知できるような記事、写真などでの報道が禁止されています。

 今回の改正によって、特定少年のときに犯した事件について起訴された場合には、その対象外となり、略式手続の場合を除き実名報道ができるようになりました。

保護処分に関する特例

 今回の改正によって特定少年の保護処分は、家庭裁判所が、犯した罪の責任を超えない範囲内で
下記3つのうちいずれかを選択することとなりました。

  • 6か月の保護観察
  • 2年間の保護観察(遵守事項に違反した場合には少年院に収容することが可能)
  • 少年院送致(家庭裁判所が、犯した罪の重さを考慮して、3年以下の範囲内で決定)

 また、保護処分の決定にあたって「犯情の軽重を考慮する」ことが明文で規定されました。犯情とは犯罪の経緯に関する事情のことで、犯行の動機・手段・態様、被害者の人数・状況、被害の程度、犯行の回数などがあります。

ぐ犯事件の対象外

 ぐ犯少年とは、正当な理由がなく家庭によりつかないなど「ぐ犯事由」に該当し、性格または環境に照らして、将来的に罪を犯す、又は刑罰法令に触れる行為をする恐れがある少年のことを言います。ぐ犯少年は家庭裁判所の審判に付すこととされ、保護観察や少年院送致といった保護処分が可能となります。
 今回の法改正によって、特定少年はぐ犯事件の対象から外れました。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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