コラム

2022/08/01

交通事故と保険① ~自動車保険の基礎知識~

 自動車保険は損害保険の一つです。

 損害保険とは、保険事故(たとえば盗難・火災など)によって生ずる可能性のある損害をてん補するため、保険契約者が保険料を支払い、現実にその保険事故に遭遇して損害を被った被保険者に対し、保険金を支払うという制度のことをいいます。

 保険料を保険契約者から集めて管理し、被保険者に保険金を支払う者を保険者といい、わが国の損害保険では損害保険会社が保険者となります。

 保険契約者と損害保険会社との間に締結される契約のことを損害保険契約といいますが、損害保険のうち、自動車事故を保険事故とし、自動車事故によって発生する損害のてん補を目的とするのが自動車保険です。

自動車保険加入の必要性

 自動車事故の発生は、現代社会においては宿命的であり、万全の注意を尽くしても、優れた運転技術をもってしても、自動車事故を完全に避けうるという保障はありません。

 そして、自動車事故に遭遇すると、被害者はもちろんのこと、加害者も悲劇に巻き込まれてしまいます。その悲劇の1つが、被害者にとっては怪我が原因となり収入の途を断たれたり、治療費などの支出を余儀なくされることであり、加害者にとっては被害者に対し相当額の損害賠償金を支払わなければならなくなることです。

加害者側から見た必要性

 加害者が損害賠償金の支払いに窮したために、自殺する例も少なくありません。損害賠償金の額が大きくなれば、一人ではこれを負担しきれなくなることは、当然のことです。

 自動車保険の目的の1つは、このような場合に備え、加害者(被保険者)が自動車事故による損害賠償責任を負担することによって被る損害を、保険者がてん補することによって、加害者、被害者双方の悲劇を少しでも小さくすることにあります。

 したがって、自動車を保有し、または運転する者であれば、自動車保険に加入することが社会的責務でもあり、自分自身の悲劇を避けるための有効な手段でもあるといえます。

被害者側から見た必要性

 自動車保険の他の目的として、自動車事故によって、被保険者自身が身体に被った傷害等により発生した損害を、保険金によっててん補することがあります。

 被保険者自身が自動車事故の被害者となっても、その損害について損害賠償請求権が発生しない場合、あるいは相手方自動車に対人賠償保険が締結されていなかったり、または締結されていても保険契約の内容により十分な保険金の給付を受けられない場合、被保険者自身の過失の程度が大きくて、過失相殺により損害賠償額が大幅に減額される場合などには、その損害をてん補してくれる保険が必要になるのです。

 また、被保険者の所有する自動車について、衝突や盗難その他の事故が発生した場合には、その修理費用や別の自動車の購入資金をてん補する保険も要請されます。車両保険がこれにあたります。

 このように、被保険者自身が自動車事故の被害者となった場合などに備えるためにも、自動車保険契約を締結することは有益です。

自動車保険の種類

 自動車保険には、自賠責保険と任意保険とがあります。

 自賠責保険とは、自動車損害賠償保障法に基づき、保険契約の締結が強制されている保険のことをいい、任意保険とは、保険契約の締結が保険契約者の自由意思にまかされている保険のことをいいます。

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