コラム

2021/08/23

障がいを持つ子の為の任意後見の活用

 障がいを持つ子の親は、子が成人した後、子の財産管理は誰がどのように行うのか、不安に思われている方も少なくないかと存じます。

 本コラムでは、障がいを持つ子が成人した後の財産管理制度について説明します。

子が未成年の場合

 子が未成年のうちは、親が親権者(法定代理人)として、子の財産管理を包括的に行うことができます(民法824条)。

 しかし、子が成人してしまえば、親は、親権者ではなくなりますので、法律上、子の財産管理を代理することができなくなってしまいます。

成年後見の活用

 障がいを持つ子が成人した場合、自身で財産管理を行うことは困難です。ここでいう財産管理とは、預貯金口座の開設、預貯金の払戻、グループホームや施設との契約、病院等への支払、保険金の受領等、日常生活を送る上で必要不可欠な様々な行為が含まれます。

 そのため、障がいを持つ子の財産管理をサポートする人を選ぶ必要があります。その制度のひとつが成年後見です。

 子が成人した後、親族等が家庭裁判所に対して申立てを行い、家庭裁判所が、成年後見人を選任します。

 成年後見は家庭裁判所が審判によって後見人を決定するため、誰が後見人になるか分かりません。家庭裁判所に対し、後見人になって欲しい人を推薦することが出来ますが、必ずしもその人が後見人に選ばれるとは限りません。推薦した人が相当ではないと判断されたり、推薦がなかった場合は、第三者である弁護士や司法書士等が後見人に選任されることが多いです。

 

任意後見の活用

 任意後見は成年後見と異なり、後見人の選任は契約によって行います。そのため、後見人になって欲しい人に予めお願いをして契約を結んでおけば、その人に後見人になってもらうことが出来ます。

 もっとも、任意後見も契約ですので、この契約を結ぶためには、判断能力が必要になります。

第三者を任意後見候補者とする場合

 子が未成年の間は、親が親権者として子の為に任意後見契約を締結することが可能です。

 任意後見契約は、将来に備えて、任意後見候補者と本人があらかじめ契約を締結しておくというものです。

 第三者に任意後見候補者になってもらう場合は、このように、親が子の法定代理人として、第三者と任意後見契約を締結することが可能です。

親を任意後見候補者とする場合

 親が任意後見候補者となる場合は、親と本人が任意後見契約を締結する必要があるため少し工夫が必要になります。

 なぜなら、親が子の親権者として、親と任意後見契約を締結する場合、形式的には、親が子の代理人として自分と契約することになるので、民法826条1項が禁止する利益相反行為になる恐れがあるからです。

 このような場合、家庭裁判所に特別代理人選任申立(民法826条2項)を行い、任意後見契約を締結するためだけの特別代理人を選んでもらい、当該特別代理人と親が任意後見契約を締結する方法が考えられます。

 なお、任意後見候補者は複数名を定めておくことができるため、両親を候補者にすることも可能です。

まとめ

 弊所は、このような障がいを持つ子のための任意後見契約の組成を数多く手がけております(なお、任意後見契約は公正証書で作成する必要があります。)。

 障がいを持つ子の為の財産管理制度は、任意後見、成年後見、遺言、信託など、複数の選択肢や組み合わせがあります。個々の家族構成や財産の内容によって、相応しい選択肢は異なってくるかと存じます。

 弊所では、豊富な経験を活かし、ご家族毎に適したスキームをご提案させていただいております。お気軽にお問い合わせください。

弁護士 白岩 健介

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人日本認知症資産相談士協会 代表理事

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