コラム

2021/04/08

事業承継 ~親族外承継のメリット・デメリット~

親族外承継とは

 事業承継とは、株式会社などの事業を後継者などの第三者に継がせることをいいます。

 親族外承継は、自社の従業員、取締役への承継が行われる場合と自社の外部から新たな経営者を招き入れて行われる場合の二つがあります。この親族外承継は、経営者の親族内で適切な後継者がいない場合に、自社のことをよく知った従業員、取締役や、あるいは、外部の信頼できる人物を招き入れて承継させる方法です。

 親族内承継が経営者の親族に対する事業承継であったのに対し、中小企業の経営者にとって、我が子に事業を継がせることが当たり前ではなくなってきた昨今、親族外承継を行う企業の割合が年々増加していっています。

 親族外への事業承継を行う場合、現経営者から後継の経営者に対し、会社の代表権と株式の双方を同時に承継する形式が取られることが多いです。

 ただし親族外承継の場合、事業承継時は、後継者は経営権だけを継承し、前経営者は後継者の経営実績を認めた後に株式の継承を行うケースもあります。

親族外承継のメリット

  1.  親族内において、後継者となるにふさわしい人材がいない場合でも、会社の内外から広く候補者を求めることができ、結果として、会社にとって好ましい人材に承継を果たすことができる。
  2.  会社の取締役や長年勤務している従業員に事業承継する場合には、社内の人間関係も既に形成されており、また、会社のことをよくわかってもらっているため、経営の一体性を確保しやすい。

親族外承継のデメリット

  1.  親族外の人材に事業承継する場合、特に後継者としての資質が求められるがこととなる場合が多いが、適任者が見つからない可能性がある。
  2.  後継者として優れた人材が見つかったとしても、その者に株式取得等のために必要となる十分な資金がない場合がある。
  3.  会社の負債にかかる現経営者の個人保証がある場合、同保証債務をどのように処理するかが問題となる場合がある。
  4.  親族外の第三者への事業承継を快く思わない現経営者の親族や既存の会社のメンバーが後継者への事業の引き継ぎの協力を拒むおそれがある。

親族外承継を行うにあたっての検討課題

株式の買い取り資金に関する問題

 特に財務状況の健全な会社においては、株式が高く評価されることが多いため、親族外である後継者が株式を買い取るだけの資金に不足をきたし、株式の買取ができなくなってしまう場合があります。

 このような場合、一般的な金融機関による融資、あるいは、経営承継円滑化法による金融支援等を活用して事業承継を果たすことを検討することとなります。

 なお、経営承継円滑化法による金融支援を活用した場合、会社及び個人事業主には、信用保証協会の通常の保証枠とは別途の枠が与えられることととなります(令和3年4月時点)。

現経営者の個人保証に関する問題

 現経営者の個人保証をそのまま後継者が引き継ぐこととなった場合、後継者は、事実上会社の債務について無限責任を負うのと近い状態になってしまいます。

 また、事業承継しようとしている後継者が保有する資産額を上回っている場合、同個人保証が原因でそもそも事業承継を果たせないという事態になってしまいかねません。

 そこで、中小企業庁において、「経営者保証に関するガイドライン」を設け、(1)法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと、(2)多額の個人保証を行っていても、早期に事業再生や廃業を決断した際に一定の生活費等(従来の自由財産99万円に加え、年齢等に応じて約100~360万円)を残すことや、「華美でない」自宅に住み続けられることなどを検討すること、(3)保証債務の履行時に返済しきれない債務残額は原則として免除すること、等が策定されています(令和3年4月時点)。

弁護士 小西 憲太郎

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人MACA信託研究会 代表理事
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
一般社団法人スモールM&A協会 理事

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