コラム

2021/03/08

事業承継 ~親族内承継のメリットとデメリット~

親族内承継とは

 親族内承継とは、子ども、兄弟等の経営者の親族の中で事業承継を行うことをいいます。

 例えば、経営者である父親から長男に事業を継がせるのはその典型で、株式会社であれば、株式を贈与、売却する等して事業の承継を行うことがよく行われています。お互いよく見知った親族内で事業の承継が行われるため、他の方法と比べてスムーズに承継できる点が特徴です。

 ただし、後継者以外にも相続人がいる場合には、株式を含む他の財産(遺産)の分配の仕方を巡ってトラブルに発展することもあるため、その点については慎重な配慮が求められます。

親族内承継のメリット

  1.  親族内承継の場合、多くの場合、よく見知った親族内において承継がなされるため、承継のための準備期間を長く取ることが可能であり、また、後継者が事業を引き継ぐにあたっての教育や周囲の環境、体制づくりに十分な時間をかけることができます。
  2.  親族内承継の場合、よく見知った親族内で事業の承継が果たされるため、会社の取締役、従業員その他の関係者が納得しやすい形であるということも大きなメリットでしょう。
     また、従前の経営者がこれまでに築き上げてきた人脈や取引先との協力関係、人間関係などをそのまま新たな経営者が受け継いでも、親族であるがゆえに、周囲に理解されやすいというメリットもあります
  3.  後継者である親族が会社株式以外の財産を含めて、現在の経営者の財産を承継することでスムーズな組織承継が可能であるという点もメリットとして挙げられます。

親族内承継のデメリット

 後継者である息子、兄弟等の親族が他社で長年にわたって経験を積んできた場合には、事業承継をして会社の経営をしはじめた後に後に、直ちに安定的な会社経営を行うことができるか否かが問題になることがあります。

 このような場合、事業承継の準備期間を設け、後継者である親族の経営者教育を行う必要があるでしょう。

 また、その際には、弊所で取り組んでいる『事業承継トライアル信託』の活用も検討できたらと思います。

親族内承継をするにあたっての検討課題

 親族内承継を行うにあたっては、一般的な事業承継の検討課題のほか、以下の点についても、事前に検討しておく必要があります。

親族内に後継者としてふさわしい人物がいるか

 現在の経営者が親族内で事業の承継を果たしたいと考えても、本人にその意向がなければ事業の承継を果たすことはできません。

 また、当然のことながら、たとえ経営を引き継ぐ意思があったとしても、経営能力があるかどうかは別問題です。

 当然のことながら経営を引き継ぐということは、それに伴う責任も引き受けるということを意味するので、真に後継者としてふさわしい人物であるかどうかということを十分に吟味する必要があります。

後継者の教育

 事業を引き継ぐ後継者が親族の中にいたとしても、その者に対する経営者としての教育が必要なことがよくあります。

 そのような場合、後継者として必要な教育やサポート体制を準備できるかどうかということも含めて、事業の承継について検討する必要があります。

親族内の紛争に発展しないか

 経営者の株式を含む資産を親族である後継者に生前贈与する場合、他の親族との関係で不公平な結果をもたらし、紛争に発展することがあります。

 それゆえ、親族である後継者に経営を引き継ぐ場合には、他の親族との関係で紛争に発展しないかということに十分留意する必要があります。

弁護士 小西 憲太郎

所属
大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人MACA信託研究会 代表理事
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
一般社団法人スモールM&A協会 理事

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