取締役間の対立が会社経営に与えるリスクと初動対応
取締役間の対立、特に経営陣と支配株主・大株主との対立は、企業のレピュテーション(評判)毀損や企業価値の低下を招く重大なリスクを含んでいます。このような内紛事態においては、取締役会、監査役、社外取締役、外部専門家等を活用しながら、会社の利益を基準とした冷静かつ公正な対応を行うことが重要です。
目 次 [close]
取締役間の対立が会社経営に与えるリスクと初動対応
1.経営陣と支配株主の対立がもたらす企業価値への脅威
取締役間、特に現経営陣と支配株主(大株主)の間で深刻な対立が生じると、当事者が感情的になり、会社のレピュテーションを毀損する行動をとるなど、企業価値を低下させるリスクが高まります。支配株主は取締役の選任・解任に強い影響力を有するため、会社に生活を依存する社内取締役は大株主に反対意見を述べにくい場合があり、この点に構造的な問題があります。その結果、支配株主が自らの個人的な利益を優先し、少数株主や会社全体の利益を犠牲にする利益相反問題、いわゆる「エージェンシー問題」が発生するおそれがあります。
2.独立した立場からの利害相反の監督と仲介
こうした内紛局面において、社外取締役には、「会社と支配株主等の間の利益相反を監督すること」という重要な役割が期待されます。支配株主から経営戦略への要望が出された場合、それが尊重すべき正当なものか、あるいは利益誘導的な要素が含まれているかを慎重に検証しなければなりません。対立が決定的になる前に、社外取締役が独立した立場から意見を述べ、少数株主やステークホルダーの意向を反映させることで、社内の対立を解消し一つの方向性にまとめていく仲介役としての機能が期待されます。
もっとも、非上場会社や中小企業では、社外取締役が存在しない場合も少なくありません。その場合でも、監査役、顧問弁護士その他の外部専門家を活用し、公正な意思決定プロセスを確保することが重要です。
3.初動における公正なプロセスの構築と実務的対応
対立や利益相反が生じた際には、会社の機関設計や事案の性質に応じて、以下のような措置を検討することが考えられます。
特別委員会の活用
公正な検討プロセスを確保するため、社外取締役や外部専門家を中心とした特別委員会を設置し、取引や戦略の妥当性を客観的に判断します。
特別利害関係取締役の議決からの除外
会社法369条2項に基づき、特定の事項に直接的な利害関係を持つ「特別利害関係取締役」を、取締役会の議決から除外する措置を検討します。
外部有識者の助言
意思決定の妥当性・公正性を確保するため、必要に応じて外部有識者の助言を得るなどの枠組みを活用します。
経営方針・計画の達成度の検証
取締役会が経営方針や経営計画の達成度を定期的に検証し、代表取締役等の独断専行を牽制・抑止する態勢を維持します。
4.違法・不当な事態への是正措置と法的責任
違法又は不当な業務執行が疑われる場合には、これを放置することなく、社内調査、監査役・社外取締役・弁護士等への相談、是正措置の検討を行う必要があります。取締役は、会社に対して善管注意義務・忠実義務を負っており、対立局面であっても、会社の利益を害する行為を放置すれば、責任を問われる可能性があります。
結論:企業価値の維持・向上を基準に、冷静かつ公正な意思決定を行う
いかなる努力を尽くしても対立が解消されない極限的な事態において、取締役が拠り所とすべきは「会社の企業価値を維持するために何が最善か」という点です。支配株主の意向であっても、多数決を濫用して少数株主の利益を侵害することが明白であれば、これに対して是正を求める必要があります。最終的には、企業の持続的な成長と企業価値の向上という目標に照らし、透明性の高いプロセスを通じて意思決定を行うことが重要です。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士 小西 憲太郎
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
この弁護士について詳しく見る


前の記事へ