コラム

2021/01/18

【解決事例】父親の死亡後に認知を求めた事例

事案の概要

 母Bは、内縁の夫であるCの子であるAを出産しました。

 子Aの父Cは、子Aを認知する手続きを取らなかったため、子Aと父Cは、法律上の親子ではありませんでしたが、子A、母B、父Cの3人で、家族として、とても仲良く暮らしておりました。

 しかしながら、その後、父Cは、子Aを認知しないまま、病気で亡くなってしまいました。

 子Aの親権者である母Bは、法律上も、父Cを子Aの父親と認めてほしいと考えています。

手続の流れ

 本件では、父Cが既に死亡しているため、任意認知を行うことができません。この場合、嫡出でない子Aと、その血縁上の父Cとの間に法律上の親子関係を形成することを求める訴え(認知の訴え)の手続きを取ることができます。

 認知の訴えが認められる要件は、
①父と子の間に生物学上の親子関係があること
②父と子の間に法律上の親子関係がないことです。

 また、本件のように、父が既に死亡している場合は、死亡の日から3年以内に訴えを提起しなければならず、被告は、検察官となります。

 生物学上の子であることについては、具体的理由をあげて主張する必要があります。本件では、父親であるCが既に死亡しているため、子Aと父Cに生物学上の親子関係が存在することをどのように立証するかが問題となりました。

 幸い、子Aと父Cは、事実上も親子として一緒に暮らしておりました。そのため、子Aの幼少期から父Cが亡くなるまでの間の子A、母B、父Cの家族の写真がたくさんあり、これらの写真を裁判所に提出しました。

 また、父Cの遺留品もあったため、遺留品に付着した父CのDNAと、子AのDNAを採取し、DNA親子鑑定を行い、鑑定結果を裁判所に提出しました。

 その結果、裁判所にて、子Aと父Cとの間に、生物学上の親子関係が存在することを認めることができるとの認定がなされ、子Aが父Cの子であることを認知するとの内容の判決を得ることができました。

コメント

 父親が生存している場合は、父と子でDNA鑑定を行うことができますので、生物学上の親子関係は比較的容易に立証することができます。しかし、本件のように、父親が既に死亡している場合は、生物学上の親子関係をどのように立証できるのかが、問題となります。

 幸い、本件では、子Aと父Cの生物学上の親子関係を裏付ける証拠が存在したため、親子関係の存在を立証することに成功しました。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

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