2025/01/27
親権喪失審判の取消手続
親権喪失の手続については以前のコラムで説明しました。
一旦親権喪失の審判を受けたとしても、本人またはその親族(子も含まれます)が家庭裁判所に請求することよって、親権喪失の審判の原因となった状況が消滅していると判断されれば、親権喪失の審判を取り消すことができます(民法836条)。
本コラムでは、親権喪失の審判の取消手続について説明します。
手続の流れ
親権喪失審判の取消手続の基本的な流れは、以下のようになります。
- 親権喪失審判取消し審判の申立て
申立先は、子の住所地を管轄する家庭裁判所となります。 - 家庭裁判所による審理
子(ただし、15歳以上の子に限ります。なお、ケースによっては、15歳未満の子から意見聴取を行うこともあります。)、子に対し親権を行う者、子の未成年後見人、親権喪失した者の陳述を聴いたうえで、親権喪失した者に再び親権を行使させても、子の利益を害さない状態になった(=親権喪失の原因が消滅した)かどうかを検討します。 - 審判の告知
家庭裁判所は、審理の結果、親権喪失審判を取り消すかどうかを判断し、審判をします。
取消を認容する審判は、申立人、審判を受けるものとなる親権者、利害関係人、子、子に対し親権を行う者、子の未成年後見人に告知されます。ただし、子の年齢や発達の程度によっては、告知が子の利益を害すると判断された場合、子に対しては告知をしなくてもよいと定められています(家事手続法170条本文ただし書)。
親権喪失審判の取消しを却下する審判は申立人に告知されます。 - 審判の確定
即時抗告の期間である2週間以内のうちに、即時抗告をすることができる者が誰も即時抗告をしなければ、審判が確定します。
申立ができる人
親権権喪失審判取消し審判の申立てができる人は以下のとおりです。
- 親権を喪失された本人(父または母)
- 子
- 親族
- 児童相談所所長
申立に必要な書類
審判を申し立てる際、必要になる書類と費用は以下のとおりです。ただし、個々の状況によって異なるケースもありますので、事前に申立先の家庭裁判所に問い合わせることをおすすめいたします。
- 申立書
- 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 子及び親権者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 在職証明書 ※児童相談所所長の場合
- 親権喪失審判書謄本
- 親権喪失の原因が消滅した資料
- 収入印紙
- 郵便切手
即時抗告
親権喪失審判取消し審判の結論に納得がいかないときには、不服申立てを行うことができます。この手続を即時抗告といいます。即時抗告の申立て期限は2週間以内となっていますが、起算点は以下のように異なります。
- 即時抗告をする者が審判の告知を受ける者である場合
その者が告知を受けた日 - 即時抗告をする者が審判の告知を受ける者でない場合や子である場合で、容認審判の場合
親権を喪失したものが審判の告知を受けた日 - 即時抗告をする者が審判の告知を受ける者でない場合や子である場合で、却下審判の場合
申立人が告知を受けた日
審判確定後の流れ
親権喪失審判取消しの審判が確定した場合、もとの親権喪失審判によって喪失されていた親権は回復します。
それに伴い、単独親権となっていた場合は共同親権となります。
また、未成年後見開始となっていた場合は後見が終了します。
なお、申立人は、戸籍上の手続について、審判確定から10日以内に親権喪失の取消届をしなければなりません。

弁護士 田中 彩
- 所属
- 大阪弁護士会
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