コラム

2024/01/22

匿名加工情報・匿名加工情報取扱事業者とは

 スマートフォンの普及や通信技術の発達によって、個人情報を含むさまざまなデータがビジネスで積極的に利活用されています。そこで、個人データをより便利に利用できるように法整備が進められ、2017年の改正個人情報保護法によって匿名加工情報制度が設けられました。

 本コラムでは、匿名加工情報・匿名加工情報取扱事業者について解説いたします。

匿名加工情報とは

この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。

一 第一項第一号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

二 第一項第二号に該当する個人情報 当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

個人情報保護法2条6項

 このように、匿名加工情報とは特定の個人を識別することができないように個人情報を加工し、当該個人情報を復元できないようにした情報のことをいいます。「特定個人を識別することができない」とは、特別な技術や装置を用いた場合ではなく、一般人の判断力や理解力をもって具体的な人物との情報の間に同一性を認められるかどうかとなります。

作成

個人情報取扱事業者は、匿名加工情報(匿名加工情報データベース等を構成するものに限る。以下この章及び第六章において同じ。)を作成するときは、特定の個人を識別すること及びその作成に用いる個人情報を復元することができないようにするために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、当該個人情報を加工しなければならない。

2 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、その作成に用いた個人情報から削除した記述等及び個人識別符号並びに前項の規定により行った加工の方法に関する情報の漏えいを防止するために必要なものとして個人情報保護委員会規則で定める基準に従い、これらの情報の安全管理のための措置を講じなければならない。

3 個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、当該匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目を公表しなければならない。

個人情報保護法43条1項~3項

 個人情報保護法施行規則34条では以下のように基準を定めています。

法第四十三条第一項の個人情報保護委員会規則で定める基準は、次のとおりとする。

一 個人情報に含まれる特定の個人を識別することができる記述等の全部又は一部を削除すること(当該全部又は一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

二 個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

三 個人情報と当該個人情報に措置を講じて得られる情報とを連結する符号(現に個人情報取扱事業者において取り扱う情報を相互に連結する符号に限る。)を削除すること(当該符号を復元することのできる規則性を有しない方法により当該個人情報と当該個人情報に措置を講じて得られる情報を連結することができない符号に置き換えることを含む。)。

四 特異な記述等を削除すること(当該特異な記述等を復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。

五 前各号に掲げる措置のほか、個人情報に含まれる記述等と当該個人情報を含む個人情報データベース等を構成する他の個人情報に含まれる記述等との差異その他の当該個人情報データベース等の性質を勘案し、その結果を踏まえて適切な措置を講ずること。

匿名加工情報の作成の方法に関する基準

 匿名加工情報は、本人の同意無く第三者に提供できるため、住所や氏名などの個人が特定できる情報を削除し、適切に加工することが最低限求められます。

 例えば、クレジットカード会社では以下のような加工を行うことが考えられます。


加工前加工後
氏名〇〇太郎削除
カード番号△△△△-△△△△-△△△△-△△△△削除
住所大阪府大阪市北区西天満3-13-18大阪府
年齢35歳30~35歳
利用日2023年8月31日2023年8月16日~末日
利用店舗□□薬局医薬・ドラッグストア

 匿名加工された情報は、一定の条件のもとで第三者に本人の同意なく提供できます。匿名加工情報を利用することで以下のようなことが期待されます。

  • クレジットカードの購買履歴や乗客の乗降データを利活用することによる新たなサービスの提供
  • 医療情報を活用した創薬・臨床分野の発展
  • カーナビ収集される走行位置履歴等を活用した精緻な渋滞予測

匿名加工情報の取り扱い

 匿名加工情報が本人の同意無く第三者に提供できるといっても、事業者は事由に取り扱って良いわけではありません。

提供

個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して当該匿名加工情報を第三者に提供するときは、個人情報保護委員会規則で定めるところにより、あらかじめ、第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及びその提供の方法について公表するとともに、当該第三者に対して、当該提供に係る情報が匿名加工情報である旨を明示しなければならない。

個人情報保護法43条4項

識別行為の禁止

個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成して自ら当該匿名加工情報を取り扱うに当たっては、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならない。

個人情報保護法43条5項

匿名加工情報取扱事業者は、匿名加工情報を取り扱うに当たっては、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、当該個人情報から削除された記述等若しくは個人識別符号若しくは第四十三条第一項若しくは第百十六条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定により行われた加工の方法に関する情報を取得し、又は当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならない。

個人情報保護法45条

安全管理装置

個人情報取扱事業者は、匿名加工情報を作成したときは、当該匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、当該匿名加工情報の作成その他の取扱いに関する苦情の処理その他の当該匿名加工情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。

個人情報保護法43条6項

匿名加工情報取扱事業者は、匿名加工情報の安全管理のために必要かつ適切な措置、匿名加工情報の取扱いに関する苦情の処理その他の匿名加工情報の適正な取扱いを確保するために必要な措置を自ら講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならない。

個人情報保護法46条

匿名加工情報取扱事業者とは

この章、第六章及び第七章において「匿名加工情報取扱事業者」とは、匿名加工情報を含む情報の集合物であって、特定の匿名加工情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したものその他特定の匿名加工情報を容易に検索することができるように体系的に構成したものとして政令で定めるもの(第四十三条第一項において「匿名加工情報データベース等」という。)を事業の用に供している者をいう。ただし、第二項各号に掲げる者を除く。

個人情報保護法16条6項

 個人情報取扱事業者は匿名加工情報の作成者となり、匿名加工情報取扱事業者はその受領者となります。

小西法律事務所

法律相談申込