コラム

2023/09/04

暗号資産(仮想通貨)交換業者に対する資金決済法の規制について

 日本における暗号資産(仮想通貨)にかかわる法制度は、2017年施行の資金決済法・犯罪収益移転防止法等の改正、2020年施行の資金決済法および金融商品取引法等の改正により整備されてきました。

 本コラムでは暗号資産(仮想通貨)交換業者に対する資金決済法の規制について解説いたします。

暗号資産(仮想通貨)交換業者の規制の流れ

 2017年に施行された資金決済法の改正により、暗号資産(仮想通貨)を法定通貨ではない支払い手段のひとつと定義し、暗号資産(仮想通貨)交換業者を登録制としました。

 また、利用者保護の観点から、利用者資産の分別管理や、情報の安全管理など一定の制度的枠組みも整備されました。

 その後、顧客の暗号資産(仮想通貨)の流出事案の発生や、暗号資産(仮想通貨)が投機対象となるなど暗号資産(仮想通貨)を取り巻く環境の変化に伴い、顧客資産のオフライン管理、暗号資産カストディ業者に対する規制の追加、過剰な広告・勧誘の禁止等を内容とする改正資金決済法が2020年に施行されました。

資金決済法 

 暗号資産(仮想通貨)交換業者に対する資金決済法の規制の主なポイントは以下となります。

  1. 暗号資産(仮想通貨)交換業者を登録制に
  2. 情報の安全管理
  3. 利用者資産の管理
  4. 広告・勧誘に関する規制

①暗号資産(仮想通貨)交換業者を登録制に

 2017年の資金決済法の改正で、暗号資産(仮想通貨)交換業者を登録制にし、規制対象としました。

 暗号資産(仮想通貨)交換業者とは、下記のいずれかの行為を公衆に対して反復・継続的に行う事業者のことをいいます。

  1. 暗号資産(仮想通貨)の売買または他の暗号資産(仮想通貨)との交換
  2. 1の行為の媒介、取次、代理
  3. 1、2の行為に関する利用者の金銭・暗号資産(仮想通貨)の管理
  4. 他人のための暗号資産(仮想通貨)の管理

 2020年の法改正で、4の「他人のための暗号資産(仮想通貨)の管理」が追加されたことにより、カストディ業者も暗号資産(仮想通貨)交換業者として登録対象となりました。

 カストディ業者とは、ウォレットサービスを提供する事業者に代表されるような、自身では、暗号資産の売買等の業務は行わず、利用者の資産について、保管、管理し、利用者の指示に基づき、指定されたアドレスに暗号資産を移転させる業務を行う事業者のことをいいます。

②情報の安全管理

 2017年の資金決済法の改正により、暗号資産交換業者は、システムで取り扱う情報について、安全管理措置を講じる必要があると定められました。

③利用者資産の保護

 2020年の法改正で、暗号資産(仮想通貨)交換業者が破綻した場合などにおいて、利用者を保護する仕組みが強化されました。

 暗号資産(仮想通貨)の管理を交換業者に委ねている場合、利用者は他の債権に優先して弁済を受けることができ、交換業者は優先弁済の原資を確保するために、利用者から預かった暗号資産(仮想通貨)と同種・同数の暗号資産(仮想通貨)を自ら保有しなければならなくなりました。

 そして、この利用者の優先弁済権を確保する手段として、2017年の改正資金決済法では、利用者からの預かり金を銀行の預金口座等において分別管理することも認められていましたが、2020年の改正資金決済法によって、信託銀行や信託会社に信託することが義務となりました。

 なお、暗号資産(仮想通貨)交換業者は、利用者の暗号資産(仮想通貨)と自己の暗号資産(仮想通貨)が混同しないよう、分別して管理する必要があります。

 また、利用者の暗号資産(仮想通貨)はコールドウォレット(オフライン)などリスクの少ない方法で管理し、ホットウォレット(オンライン)で管理する場合は、同規模の弁済原資を保持することが義務付けらました。

④広告・勧誘に関する規制

 2020年の法改正で規制が追加されました。

 暗号資産(仮想通貨)交換業者が、暗号資産(仮想通貨)交換業に関する広告をする場合、以下の事項を表示する必要があります。

  • 商号
  • 暗号資産(仮想通貨)交換業者であること
  • 登録番号
  • 暗号資産(仮想通貨)が日本国又は外国の通貨ではない旨
  • 利用者の判断に影響を及ぼす暗号資産(仮想通貨)の性質

 また、暗号資産(仮想通貨)交換業者やその役員・従業員が広告や勧誘、契約締結をするのに際し、以下の行為をすることが禁止されます。

  • 虚偽表示
  • 暗号資産(仮想通貨)の性質等について誤解を招く表示
  • 支払手段の目的でなく、もっぱら投機目的での暗号資産(仮想通貨)の取引を助長する表示
  • その他、利用者保護に欠け、又は、暗号資産(仮想通貨)交換業の適正・確実な遂行に支障を及ぼすとして内閣府令で定める行為

弁護士 川並 理恵

所属
大阪弁護士会
大阪弁護士会消費者保護委員会
全国倒産処理弁護士ネットワーク会員

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