スイーツ・ロー⑸~平成30年食品衛生法改正と食品等のリコール情報の届出制度~
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食品等のリコール情報の届出制度の概要
本コラムでは、下記コラムに引き続き、平成30年食品衛生法改正のうち、「食品等のリコール情報の届出制度」について解説したいと思います。

上記コラムでは、平成30年食品衛生法改正のうち、HACCPに沿った衛生管理の制度化について取り上げました。HACCPに沿った衛生管理の制度化とは、従前から求められてきた衛生管理を「最適化」・「見える化」するものであり、小規模な営業者等の場合、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(各業界団体が作成する手引書を参考に簡略化されたアプローチによる衛生管理を行うこと)の実施が必要となりました。
もっとも、HACCPに沿った衛生管理が奏功せず、結果として、健康被害の生じ得る食品等が流通してしまうこともあります。かかる事態が生じた場合、事業者は、従前から、対象となった食品等の自主回収(以下、本コラムでは「リコール」といいます。)等の措置を行っていましたが、食品衛生法上、このリコールに関する規定は設けられていませんでした。
本コラムで取り上げる「食品等のリコール情報の届出制度」とは、このような事業者による食品等のリコール情報について、行政が確実に把握することで的確な監視指導や消費者への情報提供につなげ、食品による健康被害の発生を防止するため、行政への届出を義務付けるものです(食品衛生法58条)。この報告制度は、令和3年6月1日から既に施行されており、個人のパティシエ、洋菓子店、和菓子店等も対象となっています。
なお、実際に届出・公開された食品等のリコール情報は、食品衛生申請等システムの公開回収事案検索で検索可能です。
以下、ポイントをご説明いたします。
〈出典〉厚生労働省ウェブサイト・「食品衛生法等の一部を改正する法律」に基づく政省令等に関する説明会資料「食品等の自主回収報告制度の創設」
報告の対象
(1) 食品衛生法違反又はそのおそれがある場合
「食品等のリコール情報の届出制度」の対象としては、
- 食品衛生法に違反する食品等
- 食品衛生法違反のおそれがある食品等
の2種類が定められています(食品衛生法58条1項)。
このうち、①食品衛生法に違反する食品等とは、食品衛生法59条の廃棄・回収命令の対象と同じ範囲の法違反のある食品等をいいます。例えば、腸管出血性大腸菌に汚染された菓子(食品衛生法6条違反)、添加物の使用基準に違反した菓子(食品衛生法13条2項違反)があたります。
また、②食品衛生法違反のおそれがある食品等の例としては、食品衛生法に違反する菓子と同じ原料を使用している、製造方法、製造ラインが同一であることで汚染が生じている等として、食品衛生法に違反する菓子と同時に回収する菓子が挙げられるでしょう。
(2) 届出対象から除外される場合
ただし、①②に該当する場合であっても、一定の要件を満たすときは届出対象から除外されます(食品衛生法58条1項柱書括弧書)。その要件については、下図をご参照ください。

〈出典〉厚生労働省ウェブサイト・自主回収報告制度(リコール)に関する情報「報告対象から適用除外される場合(共同命令第1条関係」
届出から公表までの流れ
(1) オンライン上での入力による届出
食品等のリコール情報の届出から公表までの流れは、次のとおりです。
まず、食品等の製造者・販売者は、都道府県等に対し、原則として、オンライン上(食品衛生申請等システム)での入力により、リコール情報を届け出ます。
届出を受けた都道府県等はこれを厚生労働省に報告し、その後、消費者に対しては、食品衛生申請等システムの公開回収事案検索において情報提供がなされます。
(2) リコール食品等のクラス分類
なお、届出された食品等のリコール情報は、都道府県等において、健康被害発生の可能性を考慮し、リスクに応じて3つのクラスに分類されます。

〈出典〉厚生労働省ウェブサイト・改正食品衛生法の施行に関する説明会資料「改正食品衛生法に関する情報提供」
この点、厚生労働省ウェブサイト「食品等自主回収(リコール)報告制度の創設に関するQ&A」によると、クラス分類については、届出時に直ちに分類が判断できない場合は「CLASSⅡ」に分類し、その後の情報を踏まえ適切な分類に変更することとされています。例えば、「CLASSⅡ」に分類される一般細菌数や大腸菌群などの成分規格不適合の食品について、その後、食中毒の原因食品として断定された場合は、食品衛生法第6条違反となり、「CLASSⅠ」に分類されることになります。
まとめ
以上、食品等のリコール情報の届出制度について、ポイントを解説しました。
ご不明な点やご相談がありましたら、当事務所までご遠慮なくお問い合わせください。

弁護士 弁理士 片木 研司
- 所属
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