コラム

2023/05/18

犬猫等販売業者に対する規制

 ペットショプやペットホテルなど、業として、営利性を持って行うものは第一種類動物取扱業者にあたります。

  第一種類動物取扱業者の中でも、犬猫等販売業者は特別な規定が定められています。

 本コラムでは、犬猫等販売業者に対する規制について解説いたします。

犬猫等販売業者とは

 犬又は猫の販売や販売のための繁殖を行う第一種動物取扱業者は「犬猫等販売業者」と定められています。

登録手続(動物愛護管理法10条3項2号)

 犬猫等販売業を営もうとする場合には、第一種動物取扱業の登録に必要な申請書に加えて、以下の事項を併せて記載しなければなりません。

  1. 販売の用に供する犬猫等の繁殖を行うかどうか
  2. 犬猫等健康安全計画

犬猫等健康安全計画

 犬猫等健康安全計画は、幼齢の犬猫等の健康及び安全の確保、犬猫等の終生飼養の確保を図るため適切なものとして基準を満たさなければなりません。(動物愛護管理法12条1項)

 基準は以下の通りになります。(動物愛護管理法施行規則3条3項)

  1. 犬猫等健康安全計画が、動物の健康及び安全の保持その他動物の適正な取扱いを確保するために必要な基準(動物愛護管理法施行規則3条1項)、飼養施設の構造・規模・管理に関する基準(動物愛護管理法施行規則3条2項)、動物の管理の方法等の基準(第一種動物取扱業者及び第二種動物取扱業者が取り扱う動物の管理の方法等の基準を定める省令2条)に適合するものであること。
  2. 幼齢の犬猫等の健康及び安全の保持の確保上明確かつ具体的であること。
  3. 販売することが困難になった犬猫等の取扱いが、終生飼養を確保するために適切なものであること。

 また、具体的な事項として以下の記載が必要となります。(動物愛護管理法10条3項2号および施行規則2条2項)

  1. 幼齢の犬猫等の健康及び安全を保持するための体制整備
  2. 販売の用に供することが困難になった犬猫等の取扱い
  3. 幼齢の犬猫等の健康及び安全の保持に配慮した飼養、保管、繁殖及び展示方法

計画の遵守

 犬猫等販売業者は、犬猫等健康安全計画で定めた内容に従って、業務を行わなければなりません。(動物愛護管理法22条2項)

 犬猫等販売業者が犬猫等健康安全計画を守っていない場合、都道府県知事は報告を求めたり、検査を行ったりすることができます。(動物愛護管理法24条1項)

獣医師との連携確保

 犬猫等販売業者は、犬猫の健康及び安全を確保するため、獣医師等との適切な連携の確保を図らなければなりません。(動物愛護管理法22条の3)

販売困難な終生飼養

 犬猫等販売業者は、やむを得ない場合を除いて、販売することが困難となった犬猫等についても、終生飼養の確保を図らなければなりません。(動物愛護管理法22条の4)

 終生飼養とは、動物が命を終えるまで適切に飼養することです。「終生飼養の確保」とは、犬猫等販売業者が自ら飼養するだけではなく、動物愛護団体と連携して譲渡先を見つけることも「確保」に含まれると解されています。

56日齢の販売制限

 繁殖を行っている犬猫等販売業者は、出生後56日を経過しない犬猫を販売したり、販売のために引渡したり、展示してはなりません。(動物愛護管理法22条の5)

 なお、生まれた日は日齢に含まれず、生まれた次の日を1日として計算します。

犬猫等の検案

 犬猫等販売業者の所有する犬猫が死亡し、死亡の発生の状況から照らして必要があると判断したとき、都道府県知事は犬猫等販売業者に対して、期間を指定して、期間内に犬猫が死亡した場合は獣医師による検案を受け、当該指定期間から30日以内に死亡した犬猫等の検案書、又は死亡診断書を提出するよう命じることができます。(動物愛護管理法22条の6)

マイクロチップ

 令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫について、マイクロチップの装着が義務化されました。マイクロチップは、直径1.4 mm~2mm、長さ8.2mm~12mm程度の外側に生体適合ガラスを使用した円筒形電子標識器具で、それぞれのチップの中には、15桁の個体番号(ID番号)が記録されています。

 犬猫等販売業者は、犬または猫を取得したときは、取得した日(生後90日以内の犬または猫を取得した場合にあっては、生後90日を経過した日)から30日を経過する日(その日までに犬または猫の譲渡をする場合は、その譲渡日)までに、犬または猫にマイクロチップを装着しなければなりません。ただし、犬または猫が既にマイクロチップが装着されているときや、マイクロチップを装着することが犬または猫の健康・安全の保持上支障が生じるおそれがあるときなど、やむを得ない場合はこの限りではありません。マイクロチップを装着する者は、獣医師か愛玩動物看護師に限られます。(動物愛護管理法39条の2、施行規則21条の4)

 また、何人も、犬または猫の健康・安全の保持上支障が生じるおそれがあるときなど、やむを得ない事由に該当するときを除いては、装着されているマイクロチップを取り外してはなりません。(動物愛護管理法39条の4)

  犬猫等販売業者は所有する犬または猫について、マイクロチップを装着した日から30日を経過する日(その日までに当該犬または猫の譲渡をする場合は、その譲渡日)までに、環境大臣の登録を受けなければなりません。(動物愛護管理法39条の5第1項)

 登録を受けるには、以下の事項を記載した申請書と獣医師が発行するマイクロチップ装着証明書を環境大臣に提出しなければなりません。(動物愛護管理法39条の5第2項及び3項)

  • 氏名及び住所
  • マイクロチップの識別番号
  • その他、環境省令で定めるもの

 登録を受けると、環境大臣より登録証明書が交付されます。登録した情報に変更がある場合、変更を生じた日から30日を経過する日までに、環境大臣に届け出なければならず、登録を受けた犬または猫の譲渡しは、登録証明書とともにしなければなりません。(動物愛護管理法39条の5第8項及び9項)

 登録を受けた犬または猫を取得した犬猫等販売業者や、登録を受けた犬または猫を登録証明書とともに譲り受けた場合は、犬または猫を取得した日から30日を経過する日(その日までに犬または猫の譲渡をする場合、その譲渡日)までに変更登録を受けなければなりません。(動物愛護管理法39条の6)

登録を受けた犬または猫の所有者は、犬または猫が死亡したとき、その他の環境省令で定める場合に該当するときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、その旨を環境大臣に届け出なければなりません。(動物愛護管理法39条の8)

犬猫等健康安全計画が動物愛護管理法第12条第1項に規定する幼齢の犬猫等の健康及び安全の確保並びに犬猫等の終生飼養の確保を図るため適切なものとして環境省令で定める基準に適合しなくなったときには、都道府県知事から、登録取消し又は6か月以内の期間を定めた業務の全部若しくは一部の停止を命じられることがあります(動物愛護管理法19条1項4号)

まとめ

 犬猫等販売業者には各種の遵守事項が定められていますので、登録取消しなどの行政処分がなされたときには速やかに弁護士に相談することをおすすめいたします。

弁護士 石堂 一仁

所属
大阪弁護士会
大阪弁護士会 財務委員会 副委員長(H29.4~)
大阪弁護士会 司法委員会(23条小委員会)
大阪弁護士会 弁護士業務改革委員会(ベンチャー法務プロジェクトチーム)
近畿弁護士会連合会 税務委員会 副委員長(H31.4~)
租税訴訟学会

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