コラム

2023/04/13

暗号資産(仮想通貨)と遺言

 暗号資産(仮想通貨)の広がりにより、今後、保有する暗号資産(仮想通貨)の取り扱いを遺言書に記載するケースも増加すると考えられます。

 本コラムでは暗号資産(仮想通貨)と遺言について解説いたします。

 ご自身の暗号資産(仮想通貨)を特定の相続人に相続させたい場合、特定の相続人に「相続させる」旨の遺言をすることにより、死亡と同時に暗号資産(仮想通貨)を当該特定の相続人(以下「受益相続人」といいます。)に承継させることができます。

取引所に預託されている場合

 暗号資産(仮想通貨)が取引所に預託されている場合、受益相続人は当該取引所に対し、暗号資産(仮想通貨)の返還を請求できます。

 取引所の多くは、遺言によって継承された受益相続人からの請求があれば、遺言書等の必要書類の提出によって、預託資産の返還に応じる運用となっているようです。但し、実際の預託資産の返還方法は、暗号資産そのものの返還ではなく、暗号資産を日本円に換価した上で、日本円で返還する方法をとる取引所が多いようです。

個人ウォレットで管理されている場合

暗号資産(仮想通貨)が個人ウォレットで管理されている場合、受益相続人が秘密鍵を管理していれば、そのまま、相続した暗号資産(仮想通貨)を処分することが可能となります。これに対し、受益相続人が秘密鍵を把握していない場合は、暗号資産(仮想通貨)は受益相続人に承継されるものの、実際に、受益相続人において、当該暗号資産を処分することができない状態に陥ってしまうこととなります。

暗号資産(仮想通貨)に関する遺言を残す際の留意点

 ご自身の保有する暗号資産(仮想通貨)に関する遺言を残す場合、遺言書に暗号資産(仮想通貨)の所在(取引所の名称等)を明確に記載しておくことが重要と思われます。

この点、取引所を利用している場合、銀行の取引履歴などからその所在が判明することもありますが、全く気が付かない可能性もありますので注意が必要です。

 また、個人ウォレット内に暗号資産(仮想通貨)を保有している場合、保管場所及び秘密鍵に関する情報が受益相続人において把握できない場合、実際に暗号資産(仮想通貨)を処分することができなくなってしまうため、これらの情報にアクセスする方法を遺言書に記載しておくことが必要になると思われます。

弁護士 川並 理恵

所属
大阪弁護士会
大阪弁護士会消費者保護委員会
全国倒産処理弁護士ネットワーク会員

この弁護士について詳しく見る