コラム

2020/10/26

不法行為に基づく損害賠償請求権の時効期間

 故意または過失により他人に損害を加える違法な行為を不法行為といい、加害者は不法行為により生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条)。

 不法行為に基づく損害賠償請求権は次のとおり、被害者又はその法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅します。また、不法行為の時から20年を経過したときも同様です。

不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効(改正民法724条)

 不法行為に基づく損害賠償請求権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅します。

  • 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。
  • 不法行為の時から20年間行使しないとき。

生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権の特則(改正民法724条の2)

 生命・身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権については、保護の必要性が高いこと、治療に要する期間等を考慮すると速やかな権利行使が難しいことを踏まえて、消滅時効を長期化する改正が行われました。

人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第1号の規定の適用については、同号中「3年間」とあるのは、「5年間」とする。

改正民法第724条の2

 改正により、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間については、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から、3年間ではなく、5年間となりました。

損害及び加害者を知った時とは                  

 まず、「損害を知った」というためには、加害行為が不法行為を構成することを知る必要はありますが、それは、被害者が加害行為の行われた状況を認識することで足り、裁判所の判断が常に必要となるわけではないとされています。また、損害額までも知る必要はないとするのが判例の立場です。

 次に「加害者を知った」というためには、加害者の氏名・住所を知ることが必要と考えられています。また、その加害者が損害賠償義務を負う者であることの認識は、一般人を基準として判断されています。

除斥期間の廃止

 「不法行為の時から二十年間行使しないとき。」も、改正民法では時効期間となりました(改正民法724条2号)。旧法では、「除斥期間」と解釈されていたので、不法行為時から20年経つと問答無用で権利が消えてしまいました。これに対し、改正民法では、20年の時効期間内に、時効の更新や完成猶予(旧法でいう「中断」や「停止」)もありうることになり、権利行使の機会をより確保できます。

 このように、「20年」について、(除斥期間ではなく)「時効期間」であることが明記されたことにより、不法行為を受けた被害者の救済が図りやすくなりました。

 なお、旧法下においても、最判平成10年6月12日(民集52巻4号1087頁)のように、除斥期間の適用を制限し、被害者の救済を図った判例もあります。

生後5か月時に予防接種法に基づき集団接種を受けた結果、その1週間後から重い障害により意思能力を有しない状態であり自ら損害賠償請求することが困難であった被害者が、予防接種の時から22年経過後に国を相手に損害賠償請求訴訟を提起したという事案です。最高裁は、不法行為の被害者が不法行為の時から20年を経過する前6箇月内において不法行為を原因として心神喪失の常況にあるのに法定代理人を有しなかった場合に、その後当該被害者が禁治産宣告を受け、後見人に就職した者がその時から6箇月内に損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは、民法158条の法意に照らし、除斥期間経過による権利消滅の効果は生じないと判示しました。

最高裁判所平成10年6月12日第二小法廷判決

小西法律事務所