コラム

2022/01/17

公正証書遺言作成の要件

 民法は、公正証書遺言の作成の要件として、以下の5つを定めています。

  • 2人以上の証人の立会いがあること
  • 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
  • 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせること
  • 遺言者および証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること
    ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。
  • 公証人が上記の方法に従って作成したものである旨を付記してこれに署名し、押印すること

2人以上の証人の立会いがあること

 公正証書遺言を作成する場合には、作成手続の初めから終わりまで、証人2人以上が立ち会っていなければなりません。
 証人の1人が、手続の途中で作成の場を離れたり、手続の途中から立ち会ったりした場合には、原則として遺言は無効であると考えられています。
 証人の役割は、遺言者が本人であること、遺言者が自己の意思に基づいて口授をしたこと、公証人による筆記が正確であること等を確認することです。

証人の欠格事由

 下記の者は証人となることができません。

  • 未成年者
  • 推定相続人、受遺者、これらの配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

 証人欠格者が証人となって作成された遺言は、当然に無効となります。

遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること

 遺言者は、遺言の趣旨を公証人に口授(口頭で伝えること)します。なお、手話のような手段で遺言の趣旨を伝えても、口授とは認められません。また、口授の際、遺言の内容について一語一句をすべて口頭で伝える必要はないと考えられています。
 たとえば、遺贈物件の詳細に関しては、遺言者が遺贈物件を特定できる程度の口授をして、あらかじめ作成しておいた覚書を公証人に提出することで口授に代えることができるとされています。
 しかし、遺言者が、公証人の質問に対して単に肯定・否定の動作をしたというだけでは口授があったとはいえないと考えられています。

公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせること

 公証人は、遺言者から遺言の趣旨の口授を受けて筆記を行い、公正証書遺言の原本を作成します。口述の筆記は一言一句もらさずに書き写す必要はなく、口述した趣旨を筆記します。
 その後、公証人はこれを遺言者と証人に読み聞かせるか、または閲覧させます。

遺言者および証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること

 公証人の読み間かせまたは閲覧によって、筆記が正確なことを承認すると、遺言者および証人は、各自公正証書遺言原本に署名押印します。

遺言者および証人が筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、押印すること

 遺言者が署名することができない場合、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。署名することができない場合とは、遺言者が読み書きのできない者である場合、病気やけが等により手の機能に障害がある場合などです。
 なお、この規定は証人には適用されませんので、証人については自ら署名する能力がある者を選ぶ必要があります。また、押印も署名と同様、省略することも許されると考えられています。

公証人が上記の方法に従って作成したものである旨を付記してこれに署名し、押印すること

 上記4つの要件を備えたものとして、その旨を公証人が記載したのちに公正証書遺言は成立します。

障害がある場合の公正証書遺言の作成について

 従来は、公正証書遺言作成に際しては遺言者による口授および遺言者への読み聞かせが必須の要件となるため、聴覚・言語機能障害者については、公正証書遺言を作成することはできないとされてきました。
 しかし、社会的な要請の高まりを受け、平成11年に民法が改正され、聴覚言語機能障害者に関する特則が設けられました。

口がきけない者

 遺言者が「口がきけない者」である場合には、公証人および証人の前で遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述するか自書して、口授に代えることができます。
 「口がきけない者」には、言語機能障害により発話できない者、聴覚障害のために発話不明瞭な者や、病気高齢のために発音不明瞭な者等が含まれます。
 通訳人は、特定の資格(手話通訳士等)を有する者に限定されるわけではなく、遺言者の意思を確実に他者に伝達する能力があれば足りると考えられています。

耳が聞こえない者

 遺言者または証人が「耳が聞こえない者」である場合には、公証人は筆記した内容を通訳人の通訳により遺言者または証人に伝えて、読み聞かせに代えることができます。また、公証人は、筆記内容を閲覧させる方法によることもできます。
 通訳によるか閲覧によるかは公証人の選択によりますが、筆記内容の正確性を確保するために両者を併用することも可能です。

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