コラム

2021/12/13

前妻との間の子どもが自分の子どもではない可能性がある場合の対処方法について

相談事例

 相談者Xは、交際相手であったAの妊娠をきっかけに、Aと婚姻しました。その後、相談者XとAの子として、子Yが誕生しました。なお、子Yの誕生は、相談者XとAが婚姻届を提出した150日後でした。

 そして子Yの誕生後、2年が経過しましたが、相談者Xは、Aが、子Yの妊娠発覚前に、Bとの間でも肉体関係をもっていたことを知ってしまいました。

 子Yは、相談者Xとも、Aとも似ていなかったため、相談者Xは、子Yが、自分自身ではなく、AとBとの間の子ではないかと疑念を抱くようになりました。

 そのことがきっかけとなり、相談者XとAは、夫婦仲が悪化し、離婚することとなってしまいました。なお、子Yの親権は、Aが取得しております。

 相談者Xは、子Yとの親子関係が本当にあるのか、きちんと確認したうえで、親子関係がないのであれば、親子関係を解消したいと考えています。

弁護士の回答

 相談者Xと子Yとの間には、法律上の親子関係が発生しておりますが、親子関係を争う手続としては、①嫡出否認の訴え、②親子関係不存在確認の訴えがあります。

嫡出否認の訴え

1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
2 婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

民法第772条(嫡出の推定)

 第772条の場合において、夫は、子が嫡出であることを否認することができる。

民法第774条(嫡出の否認)

 前条の規定による否認権は、子又は親権を行う母に対する嫡出否認の訴えによって行う。親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。

民法第775条(嫡出否認の訴え)

 このように、民法772条の定める期間に生まれた子は、嫡出子と推定されることになりますが、本件において、子Yの出生日は、相談者X・A間の婚姻成立の日から200日を経過しておりませんので、子Yには嫡出子の推定は及びません。

 そのため、嫡出否認の訴えの手続きをとることはできません。

親子関係不存在の訴え

 次に、親子関係不存在の訴えの手続きをとることができるか否かが問題となりますが、この点、嫡出の推定が及ばない場合には、親子関係不存在確認の手続きをとることができると考えられています。

 上述のとおり、本件においては、子Yには嫡出の推定が及びませんので、親子関係不存在確認の手続をとることが可能です。

 また、親子関係不存在確認の訴えは、調停前置主義の適用がありますので、相談者Xは、まずは子Yの住所地を管轄する家庭裁判所に、親子関係不存在確認の調停を申立てることになります。

 調停の中で、相談者Xと子Yの間で、親子関係が不存在であることについて合意ができた場合、家庭裁判所が必要な調査を行った上で、その合意が正当であると認められれば、合意の内容に従った審判がなされます。

 なお、そもそも子Yの生物学上の父が、相談者XであるかBであるかがわからない、という場合には、相談者Xと子Yとの間で、DNA鑑定を行うとよいでしょう。

 当事者間で親子関係不存在の合意ができなかった場合には、相談者Xは、子Yに対し、親子関係不存在確認訴訟を提起して、親子関係を争うことになります。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

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