コラム

2021/09/23

氏名を用いたブランド名の商標登録 ~マツキヨ知財高裁判決~

 「マツモトキヨシ」というフレーズを含む音を聞いた場合、何が連想されるでしょうか。
 「松本清」さんや「松本潔」さんといった個人の氏名でしょうか。それとも、特定の店舗や企業が思い浮かぶでしょうか。
 この点に関し、2021年8月30日、注目すべき知財高裁判決(令和2年(行ケ)第10126号)(以下「マツキヨ知財高裁判決」といいます。)が言い渡されました。

日本経済新聞 2021年8月31日 20:24
マツキヨの「音商標」認める CMフレーズで知財高裁

 本件で問題となった商標は、ドラッグストア「マツモトキヨシ」のテレビCMや店舗で流れる「マツモトキヨシ」というフレーズを含む音商標*1です。

特許情報プラットフォーム
商標出願・登録情報(商願2017-7811)
※リンクより、音商標の音声ファイルを再生することができます。

 株式会社マツモトキヨシホールディングスは、2017年1月、かかる音商標を出願しましたが、特許庁は、商標法4条1項8号を理由に商標登録を認めませんでした。
 もっとも、今回のマツキヨ知財高裁判決では、「マツモトキヨシ」というフレーズを含む音商標は、商標法4条1項8号に該当せず、特許庁の判断には誤りがあるとされています。

 本コラムでは、マツキヨ知財高裁判決を題材として、氏名を用いたブランド名の商標登録について考えてみたいと思います。

商標法4条1項8号の規定内容

 マツキヨ知財高裁判決を検討する前に、商標法4条1項8号の規定をご紹介します。
 商標法は、4条において、公益的理由及び私益的理由から登録を受けることができない商標を規定しています。そして、同条1項8号は、

 他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。

商標法4条1項8号

は、商標登録を受けることができない旨定めています。
 このうち、「他人の氏名」について、「他人」とは、自己以外の者で現存する者をいい、自然人又は法人のほか、権利能力なき社団を含むとされています。また、「氏名」とは、自然人のフルネームを指すものです。

出願人が、自身の氏名とは異なる氏名を商標出願した場合

 そのため、「田中太郎」さんが「山田太郎」という商標を出願したとしても、「山田太郎」という「他人の氏名」を含む商標である以上、「他人」である「山田太郎」さんから承諾*2を得ない限り、出願は拒絶されます(商標法4条1項8号)。

商標登録出願人 田中太郎
商標登録を受けようとする商標 山田太郎
指定商品又は指定役務 (省略)
商標登録の可否 「山田太郎」という「他人の氏名」を含むため、
「他人の承諾」を得ない限り、商標法4条1項8号により出願拒絶。

出願人が、自身の氏名を商標出願した場合

 もっとも、問題となるのは、出願人本人が、自身の氏名を商標出願したとしても、商標法4条1項8号によって出願が拒絶されることです。
 すなわち、先ほどの例で、「田中太郎」さん本人が「田中太郎」という商標を出願したとしても、当該「田中太郎」さんとは別に、同姓同名の「田中太郎」さんが存在する以上、これは「他人の氏名」を含む商標にあたり、その他の「田中太郎」さんから承諾を得ない限り、出願は拒絶されます(商標法4条1項8号)。

商標登録出願人 田中太郎
商標登録を受けようとする商標 田中太郎
指定商品又は指定役務 (省略)
商標登録の可否 出願人と同姓同名の「田中太郎」という「他人の氏名」を含むため、
「他人の承諾」を得ない限り、商標法4条1項8号により出願拒絶。

商標法4条1項8号に関する特許庁の判断事例

「青木功」の商標出願

 実際、出願人が自身の氏名である「青木功」の文字商標を出願した事例において、特許庁は、

  • 本願商標は、出願人の氏名をあらわすものであるが、これと同一氏名の他人多数が、本願商標出願以前より所在することは、東京都における電話番号簿に徴して明らかである。
  • 本願登録出願は他人の承諾を得ていない。

として、商標法4条1項8号によって登録することができない旨の審決(昭和54年12月17日・昭和52年審判第17348号)を行っています。

「ヨウジヤマモト」の商標出願

 また、最近では、2019年2月、ファッションブランド「ヨウジヤマモト」を運営する株式会社ヨウジヤマモトが、「ヨウジヤマモト」の文字商標を出願(商願2019-23948)したものの、特許庁は、

  • 我が国においては、パスポートやクレジットカードなどに本人の氏名がローマ字表記される場合、「名」、「氏」の順で表記することが広く行われている以上、本願商標に接する取引者、需要者は、「ヤマモト(氏)ヨウジ(名)」と読む「人の氏名」の片仮名表記として客観的に把握するものというのが相当であり、本願商標は、「人の氏名」を含む商標である。
  • 出願人とは他人であると認められる「ヤマモトヨウジ」と読む氏名の者が「山本耀司」氏以外にも存在し、かつ、その者の承諾を得ているものとは認められない。

と判断し、商標法4条1項8号該当を理由とする拒絶査定 *3*4がなされました。

商標法4条1項8号に関する近時の知財高裁判決

 また、近時の知財高裁では、氏名の漢字表記やローマ字表記が含まれる商標に関し、商標法4条1項8号該当性を肯定する判決が相次いでなされています。

知財高判平成28年8月10日〔山岸一雄事件〕

原告(商標登録出願人) 株式会社大勝軒
商標登録を受けようとする商標
(本願商標)
山岸一雄 (標準文字)
指定商品又は指定役務 (省略)

知財高裁の判断
商標法4条1項8号に該当し、
商標登録を受けることはできない。

(理由)
 株式会社大勝軒の取締役であった「山岸一雄」とは別に、「山岸一雄」を氏名とする者が複数生存していたものと推認されるから、本願商標は他人の氏名を含む商標にあたる。また、株式会社大勝軒の取締役であった「山岸一雄」以外の「山岸一雄」を氏名とする者が本願商標の登録について承諾していたとは認められない。

知財高判令和元年8月7日〔KEN KIKUCHI事件〕

原告(商標登録出願人) アクセサリーブランド「ケンキクチ」を営むデザイナー

商標登録を受けようとする商標
(本願商標)
※ 判決別紙より

指定商品又は指定役務 (省略)
知財高裁の判断 商標法4条1項8号に該当し、
商標登録を受けることはできない。

(理由)
① 本願商標の構成中「KENKIKUCHI」部分は、「キクチ(氏)ケン(名)」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものであるから、本願商標は人の「氏名」を含む商標であると認められる。
② 商標法4条1項8号の「氏名」には、ローマ字表記された氏名も含まれる。
③ 「菊池 健」及び「菊地 健」という氏名の者は、いずれも本願商標の登録出願時から現在まで現存している者であると推認でき、原告と上記「菊池 健」及び「菊地 健」とは他人であると認められるから、本願商標は、その構成中に上記「他人の氏名」を含む商標であって、かつ、上記他人の承諾を得ているものではない。

知財高判令和2年7月29日〔TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件〕

原告(商標登録出願人) 株式会社ソロイスト
商標登録を受けようとする商標
(本願商標)
TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.
(標準文字)
指定商品又は指定役務 (省略)
知財高裁の判断 商標法4条1項8号に該当し、
商標登録を受けることはできない。

(理由)
① 本願商標の構成のうち「TAKAHIROMIYASHITA」の文字部分は、「ミヤシタ(氏)タカヒロ(名)」を読みとする人の氏名として客観的に把握されるものであり、本願商標は「人の氏名」を含む商標であると認められる。
② 氏名の読みを「ミヤシタタカヒロ」とする「宮下孝洋」、「宮下隆寛」、「宮下貴博」等は、本願商標の登録出願時から本件審決時まで現存しているものと推認でき、これらの者は、いずれも原告とは他人であると認められるから、本願商標は、その構成のうちに「他人の氏名」を含む商標であって、かつ、上記他人の承諾を得ているとは認められない。

 このうち、KEN KIKUCHI事件はアクセサリーブランド、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件はファッションブランドにかかる商標出願が問題となった事例です。
 特に、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件の原告は、「ファッションの分野においては、デザイナーがその出所を表示するブランド名として自己の氏名をローマ字表記して用いることがあり、周知、 著名となっているものが数多く存在するところ、産業発展の寄与や需要者の利益の保護の観点から、このような周知、著名なブランドの使用者に独占排他的権利が認められてしかるべきである。」とした上で、複数の観点から本願商標が商標法4条1項8号の「他人」の氏名等を含む商標には該当しないとの主張を行っていましたが、同知財高裁判決は、かかる主張をいずれも排斥しました。

マツキヨ知財高裁判決の検討

 近時の知財高裁判決が、氏名の漢字表記やローマ字表記が含まれる商標について、商標法4条1項8号該当性を肯定したことは、氏名を用いたブランド名の商標登録の道を実質上閉ざすものであり、実務上、非常に大きな影響を与えました。
 もっとも、そのような傾向にあって、マツキヨ知財高裁判決は、先述のとおり、「マツモトキヨシ」というフレーズを含む音商標について、商標法4条1項8号該当性を否定しています。
 マツキヨ知財高裁判決は、いったいどのような理由から、商標法4条1項8号該当性を否定したのでしょうか。以下では、少し長くなりますが、同判決の判断内容を検討します。

商標法4条1項8号の趣旨

⑴ 人格的利益の保護

 まず、マツキヨ知財高裁判決は、商標法4条1項8号の趣旨から、次のような解釈を導きます。

 商標法4条1項8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人は、自らの承諾なしに、その氏名、名称等を商標に使われることがないという人格的利益を保護することにあるものと解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号同16年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁、最高裁平成16年(行ヒ) 第343号同17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁参照)。このような同号の趣旨に照らせば、音商標を構成する音が、一般に人の氏名を指し示すものとして認識される場合には、当該音商標は、「他人の氏名」を含む商標として、その承諾を得ているものを除き、同号により商標登録を受けることができないと解される。

 上記部分で引用される2つの最高裁判例は、前者(最高裁平成15年(行ヒ)第265号)がLEONARD KAMHOUT事件、後者(最高裁平成16年(行ヒ) 第343号)が国際自由学園事件です。
 先に触れた近時の知財高裁判決(山岸一雄事件、KEN KIKUCHI事件及びTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件)も同様に、両最高裁判例を踏まえて、商標法4条1項8号の趣旨を「人格的利益の保護」としており、この点においては、マツキヨ知財高裁判決も従前の判決と軌を一にするものです。

⑵ 出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調整

 しかし、注目すべきは次の部分です。

 また、同号は、出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調整を図る趣旨の規定であり、音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても、当該音が一般に人の氏名を指し示すものとして認識されない場合にまで、他人の氏名に係る人格的利益を常に優先させることを規定したものと解することはできない。そうすると、音商標を構成する音と同一の称呼の氏名の者が存在するとしても、取引の実情に照らし、商標登録出願時において、音商標に接した者が、普通は、音商標を構成する音から人の氏名を連想、想起するものと認められないときは、当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものといえないから、当該音商標は、同号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。

 すなわち、マツキヨ知財高裁判決は、商標法4条1項8号の趣旨について、

  1. 自らの承諾なしに、その氏名、名称等を商標に使われることがないという人格的利益の保護に加えて、
  2. ①と出願人の商標登録を受ける利益との調整を図るもの

とした点において、従前の判決とは異なる立場をとっています。
 そして、かかる趣旨を前提として、取引の実情に照らし、商標登録出願時において、音商標に接した者が、普通は、音商標を構成する音から人の氏名を連想、想起するものと認められるか否かを、「他人の氏名」を含む商標にあたるか否かの判断基準としました。

取引の実情に関する事実認定

 続いて、取引の実情に関する事実認定の部分を検討します。
 
 事実認定において、マツキヨ知財高裁判決は、

  • 店名又は自己の企業名としての「マツモトキヨシ」の表示の長年にわたる継続使用
  • 「マツモトキヨシ」の店舗数、メンバーズカードの会員数、ブランド価値評価のランキング
  • 本願商標と同一又は類似の音にかかるテレビCM、店舗における使用実績

を具体的に指摘します。

 そして、これらからすれば、本願商標に関する取引の実情として、

「マツモトキヨシ」の表示は、本願商標の出願当時(出願日平成29年1月30日)、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の店名や株式会社マツモトキヨシ、株式会社マツモトキヨシホールディングス又はそのグループ会社を示すものとして全国的に著名であったこと

「マツモトキヨシ」という言語的要素を含む本願商標と同一又は類似の音は、テレビコマーシャル及びドラッグストア「マツモトキヨシ」の各小売店の店舗内において使用された結果、ドラッグストア「マツモトキヨシ」の広告宣伝(CMソングのフレーズ)として広く知られていたこと

が認められるとしています。
 ここでは、ⅰ「マツモトキヨシ」の表示の著名性それ自体と、ⅱ本願商標と同一又は類似の音が「マツモトキヨシ」の広告宣伝として広く知られていたことを区別し、「取引の実情」を認定している点が参考になります。

商標法4条1項8号該当性の否定

 以上を踏まえ、マツキヨ知財高裁判決は、「マツモトキヨシ」というフレーズを含む音商標について、次のとおり、商標法4条1項8号該当性を否定しました。

 (前記の)取引の実情の下においては、本願商標の登録出願当時(出願日平成29年1月30日)、本願商標に接した者が、本願商標の構成中の「マツモトキヨシ」という言語的要素からなる音から、通常、容易に連想、想起するのは、ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」、 企業名としての株式会社マツモトキヨシ、原告又は原告のグループ会社であって、普通は、「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」、「松本 潔」、「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものと認められないから、当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえない。
 したがって、本願商標は、商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標に当たるものと認めることはできないというべきである。

 つまり、本コラム冒頭で触れた質問(「マツモトキヨシ」というフレーズを含む音を聞いた場合、何が連想されるか)について、マツキヨ知財高裁判決は、具体的な事実認定を経て、ドラッグストアの店名としての「マツモトキヨシ」、 企業名としての株式会社マツモトキヨシ、原告又は原告のグループ会社であると答えたことになります。
 それゆえ、普通は、「マツモトキヨシ」と読まれる「松本清」、「松本 潔」、「松本清司」等の人の氏名を連想、想起するものと認められず、当該音は一般に人の氏名を指し示すものとして認識されるものとはいえないとして、商標法4条1項8号の「他人の氏名」を含む商標にはあたらないと判断しました。

マツキヨ知財高裁判決の意義 -氏名を用いたブランド名の商標登録の転換点?

 このように、マツキヨ知財高裁判決は、商標法4条1項8号の趣旨について、出願人の商標登録を受ける利益と他人の氏名、名称等に係る人格的利益の調整を図るものとした点において、注目すべきものであり、その後の事実認定も「取引の実情」を具体的に認定したものとして参考になります。
 特に、氏名を用いたブランド名の商標登録の道を実質上閉ざす傾向にあった近時の知財高裁判決にあって、商標法4条1項8号該当性を否定した判断は、大きな転換点ともなり得るものです。
 もっとも、マツキヨ知財高裁判決と、近時の知財高裁判決(特に、KEN KIKUCHI事件及びTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件)を整合的に理解できるかは、明らかではありません。実際、両事件の知財高裁判決においては、マツキヨ知財高裁判決と抵触するように思われる部分も存在します。
 本事件は、報道によれば、特許庁が上告を断念したため最高裁での判断はありませんが、この点は、なお今後の検討課題として残ることになります。

マツキヨ知財高裁判決に関する私見

 最後に、マツキヨ知財高裁判決について、2点、私見を述べておきたいと思います。
 まず、マツキヨ知財高裁判決は、音商標が問題となった事案ですが、商標法4条1項8号の趣旨を、人格的利益の保護に加えて、これと出願人の商標登録を受ける利益との調整を図る趣旨とした点は、同規定の適用が問題となる場面一般に妥当すると考えられます。そのため、取引の実情に照らして、当該商標が同号の「他人の氏名」を含む商標に当たるか否かを判断するアプローチは、音商標以外の商標であっても採用可能であり、マツキヨ知財高裁判決の判断は、広く商標一般に及ぶ可能性があるように思料します。
 次に、マツキヨ知財高裁判決は、商標法4条1項8号該当性の判断にあたって、「取引の実情に照らし」と判示しており、著名性それ自体を判断基準にしているわけではありません。ただし、判決を見る限り、「マツモトキヨシ」という表示の全国的な著名性が与えた影響は大きいと考えられます。
 したがって、氏名を用いたブランド名であって、全国的な著名性が認められないものを商標出願した場合には、マツキヨ知財高裁判決のアプローチを前提としたとしても、なお、商標法4条1項8号によって登録が拒絶され得ます。そのため、一般論としては、氏名を用いたブランド名の商標登録には、やはり高いハードルがあるものと思います。

 以上、ご参考になりましたら幸いです。


*1  音商標は、音楽、音声、自然音等からなる商標をいい、平成26年改正によって登録が認められた新しいタイプの商標です。実際の登録例については、特許庁HPをご参照ください。

*2  商標法4条1号8号括弧書にかかる他人の承諾については、承諾書の雛形が特許庁HP・商標審査便覧42.108.01で公開されています。
 なお、他人の承諾は査定時にあることが必要であり、出願時に他人の承諾があったとしても、査定時にこれを欠くときは、商標登録を受けることはできません(最判平成16年6月8日・判時1867号108頁〔LEONARD KAMHOUT事件〕)。

*3  他方で、過去に出願されたローマ字表記の「YOHJI YAMAMOTO」(商標登録第1678376号)は、
1984年4月20日に既に登録されています。
 この点に関連して、山本真佑子「他人の氏名を含む商標であるとして、商標登録出願が商標法4条1項8号により拒絶された事例‐TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件知財高裁判決の検討-」知的財産法政策学研究59号320頁(2021年)では、「これまで実務では、8号該当性を回避するために、氏名をローマ字にする、ローマ字(大文字)にしたうえで氏名間にスペースを入れずに表記する、図形と組み合わせる等の工夫がなされていた。」と指摘されています。
 もっとも、上記文献321頁で続けて指摘されるとおり、本コラムで触れたKEN KIKUCHI事件及びTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.事件の両知財高裁判決を前提にすれば、上記の実務上の工夫がなされた場合であっても、かかる商標出願の登録可能性は著しく低く、この点で、両知財高裁判決が与えた影響は大きかったといえます。

*4  本拒絶査定に対しては、2021年2月、拒絶査定に対する不服審判請求がなされています。
 この点、本拒絶査定は、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.知財高裁判決を引用した上で、意見書記載の出願人の主張を排斥しましたが、マツキヨ知財高裁判決のアプローチが本商標出願にも妥当するとすれば、不服審判請求の判断に影響を与える可能性があります。

弁護士 弁理士 片木 研司

所属
大阪弁護士会
日本弁理士会
デジタルアーカイブ学会 法制度部会
エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク

この弁護士について詳しく見る