コラム

2021/06/21

令和元年意匠法改正⑴ ~画像デザインと意匠権~

 デザインを保護する法律の一つとして、「意匠法」が挙げられます。
 意匠法については、令和元年、前身である意匠条例の制定以来、約130年ぶりの大改正が行われました。その後、段階的な施行を経て、令和3年6月現在、全ての改正内容が施行されています。
 かかる改正内容は多岐にわたるものですが、実務上は、①保護対象の拡充、②関連意匠制度の拡充、③意匠権の存続期間の延長が重要です ※1
 本コラムでは、上記のうち①保護対象の拡充を解説した上、意匠法における画像デザインの保護について検討したいと思います。

保護対象の拡充

改正前の「意匠」の定義

 そもそも、改正前意匠法では、どのようなデザインが保護対象とされていたのでしょうか。
 この点、改正前意匠法は、保護対象である「意匠」について、次のとおり定義していました。

第2条(定義等)
1 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。第8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。
2 前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該部分がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であつて、当該物品又はこれと一体して用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。”

改正前意匠法

〈出典:特許庁HP IP・ePlat「令和元年意匠法改正の概要」テキスト3頁

 すなわち、改正前意匠法では、保護対象である「意匠」は、「物品」有体物たる動産のデザインに限定されていました(改正前意匠法2条1項)。
 例えば、下図にもあるとおり、イヤホンのデザイン(意匠登録第1585727号)、衛生マスクのデザイン(意匠登録第1325221号)は、物品の形状として「意匠」に該当するものであり、それぞれ意匠権が取得されています。

出典:特許庁HP 「意匠制度の概要」

 他方で、改正前意匠法では、「物品」に該当しない画像や建築物のデザインは、原則として保護されず、画像デザインについてのみ、物品の意匠と評価し得る範囲で例外的に保護されていました(改正前意匠法2条1項・2項)。

改正後の「意匠」の定義

 もっとも、改正後意匠法においては、次のとおり、「意匠」の定義自体が修正され、意匠=物品というドグマからの決別がなされています。

第2条(定義等)
1 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物(建築物の部分を含む。以下同じ。)の形状等又は画像(機器の操作の用に供されるもの又は機器がその機能を発揮した結果として表示されるものに限り、画像の部分を含む。…)であつて、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。”

改正後意匠法

 このように、改正後意匠法2条1項によれば、保護対象となる「意匠」とは、

① 物品の形状等
② 建築物の形状等
③ 画像

 であって、視覚を通じて美感を起こさせるものとなります。
 そのため、「物品」に該当しない画像や建築物のデザインについても、意匠法の保護が及び、出願によって権利化を図ることが可能です。

画像デザインの保護

物品から離れた画像デザイン

 先述したとおり、改正後意匠法では、物品から離れた画像デザインそれ自体に保護が及ぶことになりました。
 具体的には、物品に記録されずクラウド上から提供される画像や、物品以外の場所に投影される画像も、「意匠」として保護されることになります。

出典:特許庁HP IP・ePlat「令和元年意匠法改正の概要」テキスト9頁

「操作画像」と「表示画像」

 ただし、改正後意匠法において、画像それ自体が「意匠」として保護されるためには、次のいずれかに該当しなければなりません(改正後意匠法2条1項)。

機器の操作の用に供される画像(操作画像)

 ウィンドウ画像、アイコン画像、メニュー画像のように、一定の作用効果や結果を得るために、物品の内部構造等に指示を入力するための画像

 出典:特許庁HP 意匠審査基準第Ⅳ部第1章「画像を含む意匠」2頁

機器がその機能を発揮した結果として表示される画像(表示画像)

 入力操作等の結果、機器自体の機能を発揮した状態として出力される画像

出典:特許庁HP 意匠審査基準第Ⅳ部第1章「画像を含む意匠」3頁

コンテンツ画像等は保護の対象外

 したがって、パソコンの壁紙のように装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像は、「操作画像」又は「表示画像」のいずれにも該当しないため、改正後意匠法によっても保護されません。

出典:特許庁HP IP・ePlat「令和元年意匠法改正の概要」テキスト10頁

 その背景には、「意匠権という強力な独占権を付与することを誘因として画像デザインの開発投資を促進する以上、当該画像デザインによって機器や機器に関連するサービス等の付加価値を向上させるものに限って権利の客体とすることが適切である」※2という改正経緯があります。
 ただし、パソコンの壁紙のように装飾的な画像や、映画・ゲーム等のコンテンツ画像については、通常、著作権法による保護は及ぶものと考えられます。

改正後意匠法による画像意匠の登録例

 特許庁の資料によれば、令和2年4月1日の改正後意匠法施行以降、画像意匠については988件の意匠登録出願(審査中含む)があり、188件の意匠登録がされたとのことです(令和3年4月1日時点で取得可能なものに限る)。
 改正後意匠法による画像意匠の登録例としては、例えば、意匠登録第1672383号「車両情報表示用画像」が挙げられます。

<出典:経済産業省HP ニュースリリース(2020年11月9日)

 このような改正後意匠法による画像デザインの保護は、IoT等の新技術の普及やGUIに対するデザイン投資の増加に伴い、今後、ますます活用されるものと思います。
 次回のコラムでは、画像デザインと並び、新たに意匠法の保護対象となった建築物のデザインに関し、ご紹介する予定です。

※1 令和元年意匠法改正の内容に関しては、特許庁HP令和元年意匠法改正特設サイトにおいて、詳細にまとめられています。

※2 特許庁HP工業所有権法(産業財産権法逐条解説〔第21版〕意匠法部分1218頁)参照。

弁護士 弁理士 片木 研司

所属
大阪弁護士会
日本弁理士会
デジタルアーカイブ学会 法制度部会
エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク

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