コラム

2021/05/13

成年後見制度とは①

 私達は、日常的に様々な法律行為をしています。法律行為というと、不動産を買うために契約書を作ったり、公証人役場で遺言書を作成したりすることなど、あまり頻繁に行われないことだと思っている方もおられるかもしれません。しかし、例えば、スーパーで買い物をすることや銀行で預金を引き降ろす事なども法律行為です。

 ところで、なぜ私達は、契約をするとその内容に即したお金を払ったり、不動産の名義を移したりする義務を負うのでしょうか。一般的に、個人がその自由意志に基づいて自律的に法律関係を形成することができる私的法律関係においては、法律行為に法律効果が発生する究極的な根拠は、行為者の意思にあるとされています。そのため、自分の行為の結果を判断することができる精神能力(意思能力)がない人がした行為は法律的な効力を持たず、無効であるとされています。

 しかし、意思能力を欠く人がした法律行為が無効になるとしても、法律行為時に意思能力がなかったことを証明することができないこともありますし、意思能力があると思って取引をした相手方の人は不測の損害を被ることもあります。

 そのため、意思能力の不十分な人の財産を保護し、また相手方も安心して取引できるように、成年後見制度が設けられているのです。また、この制度は、意思能力が不十分な人を保護するための制度ですから、本人に身体的な障がいだけしかない場合や、浪費癖などがあるだけの場合には、成年後見制度は利用できません。また、本人を保護するための制度ですから、原則として、成年後見人が、第三者に本人の財産を贈与したり、貸し付けたりすることは認められません。

成年後見制度のあらまし

 成年後見制度とは、精神上の障害(認知症の方、知的障がいを有している方、精神障がいを有している方など)により判断能力が不十分な方(以下「本人」といいます。)のために、本人を法律的に保護するための制度です。

成年後見制度の基本理念

 成年後見制度では、保護を受ける人も判断能力を有する人とできる限り同じに扱うべきであるという基本理念から、どのような保護を受けるかについて、保護を受ける本人の意志をできるだけ尊重するという考え方が取られています。

成年後見制度の概要

 成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。法定後見制度は、民法の定めに基づく制度で、後見・保佐・補助の3類型があります。

 他方、任意後見制度は、「任意後見契約に関する法律」によって創設された制度で、判断能力が衰える前に、本人が、任意後見人になる予定の人(この人を「任意後見受託者」といいます。)との間で、委任する事項を決めておき、判断能力が衰えた段階で、裁判所が任意後見監督人を選任することによって任意後見を開始する制度です。

 任意後見人が本人に不利益なことをしていないかをチェックするために任意後見監督人が任意後見人を監督します。

小西法律事務所

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