取締役会の招集・決議をめぐるトラブルと無効リスク
取締役会の開催において、法令や定款に定められた招集手続に瑕疵(招集通知漏れ、通知期間の不足、招集権者以外による招集など)がある場合、その決議は原則として無効となります。取締役会決議の無効については、株主総会決議取消しの訴えのような出訴期間の制限はなく、その効力について法律上の利害関係を有する者は、訴訟上または訴訟外で無効を主張することができます。もっとも、一部の取締役への通知漏れがあっても「特段の事情」がある場合には例外的に有効とされる判例があるほか、取締役全員(監査役設置会社では取締役および監査役の全員)が招集手続の省略に同意していた場合などには、招集手続を経ずに適法に取締役会を開催できることがあります。実務上、瑕疵ある決議を放置することは代表取締役選定の効力や株主総会の招集手続にも波及し、経営を不安定にするリスクがあるため、適法な再決議などの対応が重要となります。
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取締役会招集手続の基本ルールと瑕疵の典型例
会社法上、取締役会を招集する場合には、原則として、取締役会の日の1週間前までに各取締役に対して招集通知を発しなければなりません。監査役設置会社では、各監査役に対しても通知する必要があります。この期間は、定款によって短縮することができます。ただし、取締役全員(監査役設置会社では取締役および監査役の全員)が同意した場合には、招集手続を経ずに取締役会を開催することができます。
招集手続における瑕疵の典型例としては、以下のものが挙げられます。
- 招集通知漏れ: 一部の取締役や監査役に対して通知が行われないこと。
- 通知期間の不足: 法令や定款で定められた期間を満たさずに通知すること。
- 招集権者以外による招集: 定款等で定められた正当な権限を持たない者が招集すること。
決議無効の原則とその影響
会社法には、取締役会決議の瑕疵について、株主総会決議の取消しの訴えのような特別の規定は設けられていません。取締役会決議に招集手続上の法令・定款違反などの瑕疵がある場合には、その決議は原則として無効になると解されています。この点、株主総会決議の取消しとは異なり、取締役会決議の効力について法律上の利害関係を有する者は、出訴期間の制限を受けることなく、その無効を訴訟上または訴訟外で主張することができます。 また、招集手続に重大な瑕疵がある取締役会によって招集が決定された株主総会は、その総会決議自体に取消事由(会社法831条1項1号)が生じる可能性があり、連鎖的に会社の意思決定の有効性が揺らぐリスクを内包しています。
「通知漏れ」があっても有効とされる特段の事情
一部の取締役に対する招集通知を欠いた場合でも、最高裁判例(最判昭44.12.2)は、例外的に決議を有効とする枠組みを示しています。具体的には、「その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情」がある場合には、決議の効力に影響を及ぼさないとされています。
「特段の事情」の有無は、通知を受けなかった取締役の職務への関与状況、決議事項についての従前の認識や意向、他の取締役との関係、当該取締役が出席して意見を述べることによって他の取締役の判断が変わる可能性などを踏まえて、個別具体的に判断されます。
取締役会は、取締役相互の意見交換を通じて意思決定を行う場であるため、単に当該取締役の賛否を加えても採決結果が変わらないというだけで、「特段の事情」が認められるとは限りません。
瑕疵の治癒と実務的なリスク回避策
招集通知を受けなかった取締役または監査役が実際に取締役会に出席し、招集手続について異議を述べることなく審議・決議に参加した場合には、招集手続の瑕疵が決議の効力に影響しないと判断されることがあります。
これに対し、取締役会を欠席した者が事後的に決議へ同意しただけで、当然に招集手続の瑕疵が治癒されるとは限りません。そのため、瑕疵が判明した場合には、適法な手続によって改めて取締役会を開催し、同一の事項について再度決議するとともに、先行する決議に基づいて既に行われた行為の効力についても個別に確認することが適切です。
特別利害関係取締役が議決に参加した場合
決議について特別の利害関係を有する取締役は、その議決に加わることができません。特別利害関係取締役が議決に参加した場合には、決議の効力が問題となりますが、その取締役を除外しても決議に必要な多数が確保されていたか、その参加が審議や採決の公正に影響したかなどを踏まえて、決議の効力が判断されます。企業経営においては、些細な瑕疵が常に無効となるわけではないとされつつも、重要な意思決定(代表取締役の選定や業務上の提携など)を伴う取締役会決議には、厳格な手続遵守が求められます。
※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。
弁護士 小西 憲太郎
- 所属
- 大阪弁護士会
刑事弁護委員会
一般社団法人財産管理アシストセンター 代表理事
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