コラム

2021/02/04

美術館やギャラリーにおける写真の展示⑴ ~展示権と所有権~

 美術館やギャラリーにおいて写真を展示する場合、著作権法上、どのような点に留意すればよいでしょうか。また、展示に関連して、当該写真を解説冊子に掲載することや、SNSへ投稿することは問題ないでしょうか。
 以下では、次の事例をもとに検討してみましょう。

 【事例】
 美術館Xは、所蔵作品である写真家Yの撮影した写真(以下「本件写真」といいます。)について、写真展を開催しようとしています。

 写真展の開催にあたって、美術館Xが1~4の行為を行う場合、写真家Yの承諾は必要でしょうか。
 なお、本件写真は、写真家Yがフィルムから直接プリントしたオリジナルプリントであり、その著作権は写真家Yが有しているものとします。

1 写真展において本件写真を展示すること
2 写真展の解説冊子に本件写真を掲載すること
3 観覧者のスマートフォンやタブレット向けに、本件写真の画像を含む解説を配信すること
4 写真展を宣伝するため、本件写真の画像をSNSへ投稿すること

1 写真展において本件写真を展示すること

写真家Yの権利(展示権)

 ⑴ まず、写真家Yは、本件写真についてどのような権利を有しているでしょうか。この点、著作権法25条は、次のように規定しています。

著作者は、その美術の著作物又はまだ発行されていない写真の著作物をこれらの原作品により公に展示する権利を専有する。

第25条(展示権)

 したがって、本件写真を撮影した写真家Y(著作者)は、①本件写真が未発行である場合、②本件写真を原作品によって、③公に展示する権利(展示権)を有することになります(著作権法25条)。

⑵ ここで、①「発行」に関しては、著作権法3条1項に規定が設けられています。
 同規定によると、例えば、写真家Yが本件写真のコピーを含む写真集を相当程度の部数作成し、頒布していた場合、本件写真は未発行とはいえません。

⑶ また、②「原作品」とは、いわゆるオリジナル作品のことを指し、コピー作品(複製物)とは異なるものです。そして、写真の場合、フィルムやデジタルデータではなく、これらをプリントアウトしたものが原作品だと考えられています。
 本件写真は、写真家Yがフィルムから直接プリントしたオリジナルプリントですから、原作品にあたるといえるでしょう。

⑷ したがって、本件写真が未発行である場合、美術館Xにおいて、写真家Yの承諾なしに本件写真を公に展示することは、写真家Yの展示権を侵害するようにも思えます(著作権法25条)。
 

美術館Xの権利(所有権)との調整

⑴ もっとも、本件写真を所蔵する美術館Xは、本件写真について所有権を有しています。
 そもそも、美術館Xは、本件写真を展示することを意図して、これを所蔵したものと考えられます。それにもかかわらず、展示の都度、写真家Yの承諾を得る必要があれば、美術館Xの所有権は大幅に制限されてしまいます。

⑵ そこで、著作権法は次の規定を設け、展示権(著作権法25条)と所有権の調整を図っています。

1 …写真の著作物の原作品の所有者又はその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができる。

第45条(美術の著作物等の原作品の所有者による展示

 したがって、著作権法45条1項より、写真の著作物の原作品の所有者は、写真の著作物をその原作品により公に展示することができ、この限度において展示権(著作権法25条)の侵害は成立しません。

⑶ なお、著作権法45条2項は、屋外に恒常設置された美術の著作物について例外を定めていますが、同規定は、写真の著作物には適用されませんのでご注意ください。

結論

 したがって、美術館Xは、写真家Yの承諾を得ることなく、写真展において本件写真を展示することが可能です(著作権法45条1項)。

美術館やギャラリーにおける著作権法の重要性

 このように、美術館やギャラリーにおける活動のうち、写真の展示という典型的な場面に限っても、著作権法は極めて重要な働きをしています。
 次回のコラムでは、上記2に関して引き続き解説したいと思います。

弁護士 片木 研司

所属
大阪弁護士会

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