コラム

2026/02/05

債務者が破産した場合、債権回収のために準備していた強制執行はどうなる?

債権回収の最終手段として強制執行を準備していた矢先、取引先である債務者が破産してしまった。このような場合、準備していた債権差押えなどの手続はどうなるのでしょうか。本稿では、債務者の破産が債権者の個別の権利行使に与える影響と、債権者が採るべき対応について解説します。

破産手続の開始と個別の権利行使の禁止

債務者について破産手続開始決定がなされると、債権者がそれまで有していた権利の行使は大きな制約を受けます。破産手続は、債務者の総財産を全ての債権者へ公平に分配するための包括的な執行手続(包括執行)としての性格を持つためです。特定の債権者による個別の権利行使を許すと、債権者間の公平が害されるおそれがあります。 このため、破産法では、破産手続開始決定後は、破産債権(破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権)に基づく個別の権利行使が禁止されると定めています(破産法100条1項)。具体的には、以下のような影響が生じます。

新たな強制執行の禁止 破産債権者は、破産手続によらずに、新たに強制執行などを申し立てることはできません。

開始済みの強制執行の失効 破産手続開始決定の時点で既に開始されていた強制執行手続は、その効力を失います(失効)。

債権者が採るべき対応

個別の権利行使が禁止される代わりに、債権者は破産手続に参加し、配当を受けることで債権の回収を図ることになります。そのためには、まず裁判所に対して「破産債権の届出」を行う必要があります。実体法上は債権者であっても、この手続を経て破産債権者として確定しなければ、破産手続上は債権者として扱われず、配当を受けることができません。

届出後の手続は、以下のように進みます。

債権届出

債権者は、定められた届出期間内に、債権の額や発生原因などを裁判所に届け出ます。

債権調査

届け出られた債権について、破産管財人が認否を行うとともに、他の破産債権者も異議を述べることができます。この手続は、破産債権者でない者が手続に参加したり、本来の債権額を超えて配当を受けたりすることを防ぎ、他の債権者の利益を保護する目的があります。

債権確定

債権調査において、破産管財人が認め、かつ他の破産債権者から異議がなければ、その債権は確定します。もし異議が出された場合は、破産債権査定手続や査定決定に対する異議の訴訟といった手続によって、債権の存在および額を確定させることになります。

配当

確定した債権額に基づき、破産管財人が破産者の財産を換価して形成した財団(配当財団)から、他の債権者と平等に配当を受けます。

まとめ

債務者について破産手続が開始されると、債権差押えなどの個別の強制執行手続は進めることができなくなり、既に開始されている手続も原則として失効します。 債権者としては、速やかに方針を切り替え、裁判所の定める期間内に「破産債権の届出」を行い、破産手続に参加することが、債権回収を図るための道となります。

小西法律事務所

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