コラム

2026/01/26

暗号資産(仮想通貨)の強制執行について

昨今、ビットコイン等の暗号資産(仮想通貨)の普及に伴い、暗号資産(仮想通貨)を保有している人が増えています。

本コラムでは、債務者が暗号資産(仮想通貨)を保有している場合に、債権者はその暗号資産(仮想通貨)を強制執行できるかについて解説いたします。

債務者のウォレットで暗号資産(仮想通貨)を保有している場合

暗号資産(仮想通貨)の性質に鑑みると、暗号資産(仮想通貨)の強制執行を行うにあたっては、

①暗号資産(仮想通貨)を動産と考え、民事執行法122条以下の規定を適用して強制執行手続を行う考え方

②暗号資産(仮想通貨)を民事執行法上の「その他財産権」にあたるものと考え、民事執行法第167条以下の規定を適用して強制執行手続を行う考え方

の2通りの考え方があります。なお、実際には②の考え方がとられることが多いようです。

①の場合、執行官が目的物を占有し、換価することが想定されています。暗号資産(仮想通貨)については、債務者が管理する秘密鍵を執行官が把握できなければ、暗号資産(仮想通貨)を執行官のもとに移動させ、売却等を行うことはできないため、実効性のある手続ではないでしょう。

②の場合、裁判所は債務者に対し、差押命令を出すことになりますが、差押えの実効性は秘密鍵の管理・開示に依存することになるため、秘密鍵を把握できなければ、実効性がありません。

債務者に対して秘密鍵の開示を請求し、開示されない場合は民事執行法第172条に基づく間接強制という方法を取ることも考えられます。しかし、間接強制はあくまで金銭的な不利益を課すことによって、債務の履行を心理的に促す間接的手段であり、強制的に秘密鍵を取得する手続ではありません。債務者が秘密鍵の開示を拒み続ける場合には、履行の確保は困難です。

このように、債務者のウォレットで暗号資産(仮想通貨)を保有している場合、暗号資産(仮想通貨)は強制執行の対象となりますが、現行法の下では、債務者の秘密鍵を把握できない限り、実効性のある強制執行はできません。

暗号資産交換業者に預託している場合

一方、債務者が自分のウォレットではなく、暗号資産交換業者に暗号資産(仮想通貨)を預託している場合は、どのような強制執行が可能でしょうか。

暗号資産(仮想通貨)を暗号資産交換業者に預託している利用者は、交換業者に対して、その保管している暗号資産(仮想通貨)について、暗号資産の移転を目的とする債権を有しているものと考えられます。

この暗号資産(仮想通貨)の移転を目的とする債権(暗号資産移転請求権)は、民事執行法上の「その他財産」に該当するものと考えられます。そのため、暗号資産移転請求権を民事執行法上の「その他の財産」として、暗号資産交換業者を第三債務者として強制執行手続を行うことが可能と考えられます。

弁護士 川並 理恵

所属
大阪弁護士会
大阪弁護士会消費者保護委員会
全国倒産処理弁護士ネットワーク会員

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