コラム

2025/04/28

空き地・空き家の問題~空き地を管理しない場合の問題について~

 相続によって土地を取得した場合、その土地が必ずしも自身にとって使い勝手のいい土地であるとはかぎりません。

 相続した土地が遠方にあり使い道がなく、空き地の適切な管理を行わずに放置していると、どのような法的リスクがあるのでしょうか。

不動産登記法上のリスク

 令和3年の改正不動産登記法によって、不動産の相続人は登記義務が課されることとなりました。

 この義務を違反すると10万円以下の過料が科される可能性があります(令和6年4月1日施行)。

 この改正不動産登記法は改正法施行前に発生した相続についても、施行日を起算点として義務が発生するとされており、以下のそれぞれのケースの起算点から3年以内に所有権の移転の登記申請をしなければなりません。

  1. 改正不動産登記法の施行日(令和 6年4月1日)の前に、すでに自己のために相続があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知っていたケースでは施行日が起算点となる
  2. すでに自己のために相続があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを施行日のあとに知ったケースでは、当該知った日が起算点となる。

管理上のリスク

雑草や竹木に関する責任

土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

民法233条1項

 民法233条1項では、竹木の枝が隣地境界線を超えるとき、土地の所有者は、竹木の所有者に対して、その枝を切除させることができます。

 また、民法233条3項1号では、竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除し

ないときは、土地の所有者自らがその枝を切り取ることができると規定しています。

 この際の切除にかかった費用負担について、民法では特別の規定を定めていませんが、通常、切除費用は竹木の所有者の負担になると考えられます。

 また、土地の雑草が生い茂り、周囲に被害を及ぼした場合、土地所有者の管理責任が問われる可能性があります。

 この点、大阪地裁平成19年5月9日判決では、7歳の女児が自転車で歩道上を走行中、車道上に転倒して貨物自動車に轢過されて死亡した事故につき、事故の原因は歩道上に張り出していた生け垣にもあるとして、生け垣の所有者に対する損害賠償請求が認められました。

 道路法43条2号では、みだりに道路に竹木等の物件をたい積し、その他道路の構造又は交通に支障を及ぼすおそれのある行為をすることを禁じており、違反した者は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を規定しています(道路法102条3号)。

 さらに、道路法44条3項では、竹木の管理者は、竹木が道路の構造に損害を及ぼし、又は交通に危険を及ぼすおそれがあると認められる場合においては、その損害又は危険を防止するための施設の設置その他その損害又は危険を防止するため必要な措置を講じなければならないとされています。

また、道路法44条4項では、道路管理者は、道路法44条3項に規定する損害又は危険を防止するため特に必要があると認める場合においては、当該土地、竹木の管理者に対して、同項に規定する施設の設置その他その損害又は危険を防止するため必要な措置を講ずべきことを命ずることができるとされており、この命令に違反した者は30万円以下の罰金が規定されています(道路法106条1号)。

 このように雑草や竹木を放置していると、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

ゴミに関する責任

 空き地が適切に管理されていないと、敷地内に廃棄物を不法投棄される可能性があります。

 不法投棄された廃棄物が空き地にあふれかえり、隣地に崩れ落ちたり、はみ出したりしそうな場合、空き地の所有者は、隣地の所有者に対し、不法投棄された廃棄物が隣地に影響を及ぼさないように防止する義務を負う可能性があります。

 また、空き地の所有者が何ら対策をとらないために、不法投棄された廃棄物によって隣地の所有者の権利が侵害された場合、空き地の所有者は、損害賠償責任を問われる可能性があります。

 なお、大阪地裁平成22年7月9日判決では、市が管理していた道路供用予定地の上に放置された廃棄物に放火され隣接する建物に延焼したケースにおいて、市が当該廃棄物の撤去をしなかったこと等は、市が当該建物の管理者らから廃棄物の撤去を求める陳情を受けていた等の事実関係の下では、注意義務に違反するとして、国家賠償法1条1項に基づく責任を認めました。

 このように、空き地の所有者は、たとえ自身が不法投棄に関与していないとしても、第三者との関係においては撤去義務や損害賠償義務を負うリスクがあります。

まとめ

 以上のとおり、相続した土地が空き地であった場合、空き地を適切に管理しなければ、 登記義務違反による過料や、隣地トラブル、損害賠償責任などのリスクが発生するおそれがあります。

 空き地の問題でお悩みの方は、ご相談いただければと思います。

※本コラムは掲載日時点の法令等に基づいて執筆しております。

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