コラム

2024/08/05

協議離縁の無効を求める手続きについて

 離縁の届出によって協議離縁が成立した場合でも、以下の場合、離縁は無効となります。

  • 離縁の意思がない場合
  • 離縁の届出がなされた際に、当事者が意思能力を欠いていた場合

 本コラムでは、協議離縁の無効を求める手続について解説いたします。

協議離縁の無効の確認を求める調停

 協議離縁の無効を求める手続は、特殊調停事件とされ、調停前置主義の対象となります。

 そのため、協議離縁の無効を確認する訴えを提起するためには、原則として家庭裁判所に調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。

 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または、当事者が合意で定める家庭裁判所が管轄裁判所となります。

 申立手続きにかかる費用は、以下となります。

  • 収入印紙 1200円
  • 予納郵便切手(管轄の家庭裁判所により取り扱い金額や内訳が異なるので、管轄の裁判所にお尋ねください。)

合意に相当する審判

 協議離縁の無効を求める調停において、「離縁意思の不存在」について当事者が合意し、家庭裁判所が事実を調査した上で、合意を正当と認めるときは、「合意に相当する審判」をすることができます。

 この審判が確定すると、協議離縁無効確認の確定判決と同一の効力を生じます。合意に達しない場合は、調停は不成立となり、訴訟を提起することになります。

協議離縁無効確認の訴え

訴訟要件

原告適格・確認の利益

 協議離縁が無効であることにつき確認の利益を有するものが原告適格を有します。

 また、協議離縁の当事者だけではなく、相続関係の基礎となる身分関係に直接影響を受けるなど、自己の法的地位に直接影響を受ける第三者も訴えを提起できます。

 訴訟係属中に原告が死亡した場合、原告が1人のときは、協議離縁無効確認の訴えは当然に終了します。

養親夫婦が原告の場合、養親の一方が死亡したときは、他の養親がその訴訟を追行すると考えられます。

被告適格

 離縁の当事者の一方が協議離縁無効確認の訴えを提起する場合、他方当事者が被告となります。すでに他方当事者が死亡している場合は、検察官が被告となります。

 第三者が協議離縁無効確認の訴えを提起する場合、離縁の当事者双方が被告となります。いずれかがすでに死亡しているときは生存当事者が被告となり、当事者双方が死亡しているときは検察官が被告となります。

 訴訟係属中に被告が死亡した場合、以下の通りになると考えられます

  • 養親·養子とも単独の場合で養親または養子が原告となった場合
     検察官を被告として訴訟を追行します。
  • 養親·養子とも単独の場合で第三者が原告となった場合
     被告のいずれかが死亡したときは他の一方を被告として追行し、双方とも死亡したときは検察官を被告として訴訟を追行します。
  • 養親夫婦と養子の場合
     養親夫婦が原告で、被告である養子が死亡したときは、検察官を被告として訴訟を追行します。
     養子が原告で、被告である養親の一方が死亡したときは生存養親を被告として訴訟を追行し、養親の双方が死亡したときは検察官を被告として訴訟を追行します。
     第三者が原告で、養親の一方が死亡したときは生存養親と養子を被告として訴訟を追行し、養親の双方が死亡したときは養子を被告として訴訟を追行します。養子が死亡したときは、養親の双方が被告として訴訟を追行します。

協議離縁の成立

 協議離縁の当事者について、「協議離縁の届出がされたこと」も、協議離縁無効確認の前提となる要件です。

 離縁の届出がなされていないのに、協議離縁無効確認の訴えを提起することは確認の対象を欠くので、訴えは不適法となります。

要件事実

 「離縁の当事者のいずれかに離縁の意思がなかったこと」が請求原因となります。

 離縁の意思がなかったことは、原告が主張立証しなければなりません。養子が15歳未満のため、養子の離縁後に法定代理人となるべきものが離縁をしたときは、離縁の意思の有無は、法定代理人となるべき者について判断されます。

 離縁の意思の内容については、法律上の離縁を受け入れる意思があればよいと考えられており、他の目的を達成するために離縁届を提出した場合であっても、法律上の離縁を受け入れる意思があったと認められる場合は、離縁は無効とはなりません。

判決の効力

 協議離縁を無効とする判決は、協議離縁が無効であったことを確認するものです。ただし、判決が出た後に、自動的に戸籍が訂正されるわけではありません。

 協議離縁を無効とする判決を得た原告は、判決確定の日から1か月以内に判決の謄本を添付して戸籍の訂正の申請をしなければなりません(戸籍法116条1項)。

まとめ

協議離縁の無効の主張を検討されている方は、ご相談ください。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

この弁護士について詳しく見る