コラム

2024/05/27

養子縁組の無効を求める手続きについて

 普通養子縁組が届出によって成立した場合でも、養子縁組の意思がない場合は、その養子縁組は無効となります。

 養子縁組がなされた際に、当事者が養子縁組の意思能力を欠いていた場合もまた、養子縁組は無効となります。

 本コラムでは、養子縁組の無効を求める手続について解説いたします。

養子縁組の無効を求める調停

 養子縁組の無効を求める手続は、特殊調停事件とされ、調停前置主義の対象となります。

 そのため、養子縁組の無効を確認する訴えを提起するためには、原則として家庭裁判所に調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。

合意に相当する審判

 養子縁組の無効を求める調停において、「養子縁組が無効であること」について当事者が合意し、家庭裁判所が事実を調査した上で、合意を正当と認めるときは、「合意に相当する審判」をすることができます。

 この審判が確定すると、養子縁組無効確認の確定判決と同一の効力を生じます。

 合意に達しない場合は、調停は不成立となり、訴訟を提起することになります。

養子縁組無効の訴え

訴訟要件

原告適格

 原告適格を有するのは、縁組の当事者、訴えの利益を有する第三者です。

 縁組の当事者は、自身の法的地位そのものに関係するので、原告適格を有するのは当然です。

 一方、第三者の原告適格については、以下の判例がその基準を示しています。

養子縁組無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが、当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は右訴えにつき法律上の利益を有しないと解するのが相当である。けだし、養子縁組無効の訴えは養子縁組の届出に係る身分関係が存在しないことを対世的に確認することを目的とするものであるから(人事訴訟手続法二六条、一八条一項)、養子縁組の無効により、自己の財産上の権利義務に影響を受けるにすぎない者は、その権利義務に関する限りでの個別的、相対的解決に利害関係を有するものとして、右権利義務に関する限りで縁組の無効を主張すれば足り、それを超えて他人間の身分関係の存否を対世的に確認することに利害関係を有するものではないからである。

最高裁 昭和63年3月1日 民集42巻3号157頁

 上記判例によれば、第三者が原告適格を有するには、養子縁組が無効であることによって、自身の身分関係に関する地位に直接影響を受ける場合であることが必要となり、それ以外の場合では原告適格が否定されることになります。

被告適格

 養子縁組の当事者の一方が原告となるとき、縁組の相手方が被告となります。なお、被告が15歳未満の養子の場合、縁組が無効な場合における法定代理人が被告となります。

 第三者が養子縁組無効確認の訴えを提起するときは、縁組の当事者双方が被告となります。縁組当事者のいずれかが死亡しているときは生存者のみを被告とし、いずれも死亡しているときは検察官を被告とします。

養子縁組の成立

 養子縁組無効確認の訴えは、縁組という身分行為の効力の確認を求める訴えとなります。

 それゆえ、確認対象が存在している必要があるので、養子縁組が成立していること、すなわち当事者間の養子縁組の届出がなされたことが訴訟要件となります。

要件事実

 養子縁組の無効原因は、縁組届出の当時、当事者間のいずれかに縁組をする意思(縁組意思)がなかったことです。

 縁組当時に、縁組についての意思能力がなかった場合も、縁組意思がなかったことになります。

 また、縁組意思とは、真に社会観念上養親子と認められる関係の設定を欲する効果意思が必要と解されます。

縁組意思とは

 縁組意思があったか否かは、縁組に至るまでの経緯や当事者の関係性、縁組後の経緯、縁組当時の養親の認知状態等を考慮して判断されます。

  1. 縁組の目的から縁組意思がないとされた事例
    ・越境入学のための縁組(札幌家裁昭和38年12月2日)
    ・親権者指定手続を有利に進めるための縁組(東京高判昭和32年6月5日)
  2. 縁組意思が認められた事例
    ・過去に情交関係のあった女性を養子とする縁組(最高裁昭和46年10月22日)
    ・相続税の対策のための養子縁組(最高裁平成29年1月31日)

判決の効力

 縁組を無効とする判決は、養子縁組が最初から無効であったことを確認するものです。ただし、判決が出た後に、自動的に戸籍が訂正されるわけではありません。

 縁組を無効とする判決を得た原告は、判決確定の日から1か月以内に判決の謄本を添付して戸籍の訂正の申請をしなければなりません(戸籍法116条1項)。

まとめ

 養子縁組の無効確認でお悩みの方は、ご相談ください。

弁護士 田中 彩

所属
大阪弁護士会

この弁護士について詳しく見る