コラム

2023/12/25

保有個人データとは

 個人情報保護法は、2020年に大きな改正が行われ、2022年4月1日より施行されています。個人情報保護法には、「個人情報」と似た用語として、「個人データ」や「保有個人データ」という用語があり、3つとも個人に関する情報を意味する用語ですが、正確な定義はそれぞれ少しずつ異なります。

 本コラムでは、この個人情報保護法に関連し、「保有個人データ」について解説いたします。

保有個人データとは

 個人情報と個人データの違いについては、以下のコラムをご参照ください。

個人データとは
 個人情報保護法は、2020年に大きな改正が行われ、2022年4月1日より施行されています。個人情報保護法には、「個人情報」と似た用語として、「個人データ」や「.....

 保有個人データとは、個人情報保護法16条4項で以下のように定義されています。

この章において「保有個人データ」とは、個人情報取扱事業者が、開示、内容の訂正、追加又は削除、利用の停止、消去及び第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有する個人データであって、その存否が明らかになることにより公益その他の利益が害されるものとして政令で定めるもの以外のものをいう。

 保有個人データは、本人の関与にかかる義務規定(個人情報保護法32~35条)の対象となっています。権限のあることが要件となっていますので、企業からの委託を受けて個人データを保存していても、委託元から開示等に応じる権限を与えられていないものは保有個人データに該当しません。権限なく委託先企業が個人データを開示等した場合は、委託元との契約違反を問われることになります。

 政令で定めるものは以下となります。(個人情報保護法施行令5条)

法第16条第4項の政令で定めるものは、次に掲げるものとする。

一 当該個人データの存否が明らかになることにより、本人又は第三者の生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの

二 当該個人データの存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの

三 当該個人データの存否が明らかになることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの

四 当該個人データの存否が明らかになることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの(個人データから除外されるもの)

 各項目の具体例は個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)(平成28年11月(令和4年9月一部改正)個人情報保護委員会)に下記のように例示されています。

(1)当該個人データの存否が明らかになることにより、本人又は第三者の生命、身体又は財産に危害が及ぶおそれがあるもの

・家庭内暴力、児童虐待の被害者の支援団体が保有している、加害者(配偶者又は親権者)及び被害者(配偶者又は子)を本人とする個人データ


(2)当該個人データの存否が明らかになることにより、違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがあるもの

・暴力団等の反社会的勢力による不当要求の被害等を防止するために事業者が保有している、当該反社会的勢力に該当する人物を本人とする個人データ

・審者や悪質なクレーマー等による不当要求の被害等を防止するために事業者が保有している、当該行為を行った者を本人とする個人データ


(3)当該個人データの存否が明らかになることにより、国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれがあるもの

・製造業者、情報サービス事業者等が保有している、防衛に関連する兵器・設備・機器・ソフトウェア等の設計又は開発の担当者名が記録された、当該担当者を本人とする個人データ

・要人の訪問先やその警備会社が保有している、当該要人を本人とする行動予定等の個人データ


(4)当該個人データの存否が明らかになることにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障が及ぶおそれがあるもの。

・警察から捜査関係事項照会等がなされることにより初めて取得した個人データ

・警察から契約者情報等について捜査関係事項照会等を受けた事業者が、その対応の過程で作成した照会受理簿・回答発信簿、照会対象者リスト等の個人データ(※なお、当該契約者情報自体は「保有個人データ」に該当する。)

・犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)第8条第1項に基づく疑わしい取引(以下「疑わしい取引」という。)の届出の有無及び届出に際して新たに作成した個人データ

・振り込め詐欺に利用された口座に関する情報に含まれる個人データ

改正個人情報保護法における保有個人データ

ポイント1

 改正以前は除外されていた6か月以内に消去する短期保存データについても、保有個人データに含められることになり、開示・利用停止等の対象となりました。

ポイント2

 保有個人データの開示方法は書面による交付が原則でしたが、CD-ROM等の媒体の郵送、電子メールによる送信、ウェブでのダウンロードなどの電磁的記録の提供による方法を本人が選択して請求できるようになりました。

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